ついにベールを脱いだ4CX250-HVTCの実態
まずプレート電圧1000V、バイアス電圧マイナス200Vくらいまで測定した第一印象は「意外と素直なんじゃないの?」といった感じでした。

そこでプレート電圧を2000V、バイアスをマイナス320Vまで計測できるようセットアップした後、出てきたカーブにロードラインを引いた特性が下の図です。なんと美しいカーブでしょう。

特性を見るとやたら電圧効率が良すぎて、どこか計測ミスがあったのではないかと思ったほどです。そこでとりあえずもう少し詳しく計測したカーブから3定数を出して見ました。


  


出てきた内部抵抗は770Ω。これは2A3よりやや小さく、845の半分以下です。つまりこの球に本気で180Wくらいぶち込むと、845パラシングルのようなアンプが作れる可能性があります。

しかも今回はお値段たったの3000円ジャストでお届け出来ますので、これはもう巷の奥様たちも大騒ぎでしょう。しかしクールな私は球にもクールにということで、あえてプレート入力100W程度にて設計に臨みたいと思います。

というのもプレート損失250Wという値は冷却条件との兼ね合いで決まり、プレート入力を欲張るほど、送風音が大きくなってしまうからです。また得られる出力から、入力100Wは充分な値といえます。


     


この球の魅力は他にもあります。それはヒーター電力が6V3Aと送信管としてはかなり低く、水平出力管並だという点です。ただ注意しなくてはいけないのは、これだけコンパクトな所に18Wもの熱が集中すると相当局所的に熱くなります。

具体的には20Wセメント抵抗5個で消費させても触れないくらいのカロリーです。ですからどのようなプレート入力で動作させる時でも、プレート同様球の下半分(250Bならピンの周囲)を充分冷やす事が大切で、ついついラジエーター冷却ばかりを考えてしまうのは、X管を扱う時の盲点と言えましょう。

さらにG1損失の2Wにはヒーターからの熱輻射損失も加わりますので、特にG1をパワーグリッド扱いする送信機では、下半身冷却への配慮が充分でないと、この球は弱いなどという誤解を招きかねません。

ドライバーの設計については、実用性から0,5V入力時20Wも出れば充分ということでゲインを200倍つまり1Vでフルパワー40Wとします(rmsなら0,7V)。するとちょうど高いプレート電圧との兼ね合いで6HV5の名が浮上してきます。


      


最近うまくとれた6HV5のドライバー設計用データを下に示しました。バイアス電圧の計測表示をアナログとデジタル併用にしたため、老眼の私でも1Vおきのバイアス調整が楽になったからです。なかなかレアなグラフでしょ。


     


以上のかたちでアンプを設計すると、かなりシンプルな配線図となり、実機の完成が楽しみです。残るはプレート入力100W時における温度特性(冷却性能)の計測のみです。今日X管を取り扱う時、赤外線温度センサーは必須で、昔のアマチュア無線家はこれ無しで良くやってたものだと感心します


つづく







1 オーディオマニアに不人気なX管を思う
2 ついにベールを脱いだ4CX250K-HVTCの実態
3 冷却キャビティの実力はいかに
4 4CX250って、こんなヤツだったんだ・・・。
5 X管によるHVTC最後の仕上げ