シャーシの構成上最後の問題点は、冷却キャビティをどう取り付けるかです。というのも普通にネジ止めしただけでは、若干残っている振動がシャーシに伝わり増幅されてしまうからで、どうにかしてキャビティごとフロートさせなければなりません。

その材料としては発泡ゴムなどいろいろ考慮した末、メンテナンス等も踏まえてスプリングとL字金具とP型圧着端子で製作した、フローティングサポーターなるものを採用しました。早速取り付けてみると何じゃコリャ的な風景です。


          


ともあれここまで来れば後はシャーシのレイアウトと加工のみです。増幅回路の配線自体はムチャクチャ簡単な構成なのに対し、電源回路に必要な大量のケミコンを、どのように配置するかが問題となります。


             


  


そこでキャビティとOPT真下の部分をコンデンサースペースとして、シャーシ上の7個と合わせて19本のケミコンを搭載しました。こうして完成したのが下のアンプであります。


       


え?真空管オーディオアンプに見えない?それで結構。私自身でさえ、いきなりこんな物を見せられたら「これ、何の装置?」と答える事でしょう。

今後ソケット上部に80mmアクリルパイプで感電防止用チムニーを取り付けます。また増幅回路は毎度おなじみで、下のように極めてシンプルです。


    


また6HV5にはヒートシンクによる、簡易上昇気流発生器なるものを実験的に取り付けました。周囲に放つ遠赤外線を捉え、気流に変換しようというものです。

もっとも今回この球には6W程度しか入力されていないため、あまり強力な発熱はしていませんが、真空管の姿をアピールしながらも余分な熱輻射を排除できるので、ファンを設置するスペースの無いコンパクトアンプに利用する予定です。


              


兎にも角にもまず作りっ放しのまま歪率を測って見ることにしました。あの素晴らしいカーブからは相当リニアな特性が期待できるはずで、その計測結果が下の表です。


        


15Wくらいまで0,4%前後、20Wなら0,73%、30Wでやっと1,1%です。さらに予定最大出力である40W時1,5%、50Wで2%という値を見ると、「あんた、ホンマに送信管かいな?」と思わずつっこみたくなります。

というのも動作環境は845などと大して変わりないからなのです。f特は下の表のように高域のカットオフが17kHzとなりました。また低域は14Hzです。

高域が早めに落ちるのは大型でハイインピーダンスのOPT、L-195が持つキャラクターでしょう。特筆すべきはダンピングファクターで、6,7とかなり大きな値を出しました。


       


これほどまでに内部抵抗を低く出来るのは、もしかしたらX管ならではのメリットかもしれません。つまりX管とはプレートを外部に露出させ冷却能力を格段に上昇させた真空管と解釈できます。

するとプレート表面積がコンパクトに設計でき、カソード〜プレート(G2)間の距離が縮まったため、このような低い内部抵抗につながったというわけです。

この球による50%近いプレート効率の理由が、こうした物理的構造上の理由からだとしたならば、失われた美しいガラスチューブの姿やフィラメントの輝きについても、意味ある事として納得できましょう。

また送信機では放任状態の送風音ですが、オーディオアンプではこれにどう取り組むかが腕と根性の見せ所となります。尚、このアンプは次に控える4−400Aの超高圧3極管接続に向けて、別の簡単な実験を行う予定です。


つづく







4CX250Kって、こんなヤツだったんだ・・・。
1 オーディオマニアに不人気なX管を思う
2 ついにベールを脱いだ4CX250K-HVTCの実態
3 冷却キャビティの実力はいかに
4 4CX250って、こんなヤツだったんだ・・・。
5 X管によるHVTC最後の仕上げ