X管によるHVTC最後の仕上げ 前人未踏のアンプ作りは続く
こうしてなんとか2台の4CX250K HVTCが完成しましたが、気になる点が残ります。というのもこの球はヒーターの片側がカソードと同一電極になっていてハムバランサーを構成できないため、ヒーターノイズが残ってしまう可能性があるからです。無帰還アンプでは、このあたりのケアも重要です。

とりあえず残留ノイズを計測すると10mV程度となって、波形は明らかに50Hzのハムです。そこでブリッジダイオードと30000μFのケミコン単段により直流点火を行う事にしました。

よく昔ながらの交流点火のほうが音が良いと言いますが、もともと真空管はバッテリー駆動から始まっていて、その後交流点火が実用化され、近年ダイオードやケミコンの発達で直流点火が簡単に出来るようになったわけです。

こう考えると歴史ある直流点火のほうが、音が良いような気がしてきませんか?なんだか最初電気自動車から始まり、その後エンジンが主流となって、近年EVとなっている自動車の歴史に似ています。

フィルター段はありませんが、それでもノイズレベルは0,7mVまで低下しました。これは傍熱管のカソード自体が、物理的フィルター効果をもたらしてくれるからです

次に問題なのはヒーターのウォームアップタイムをどうするかです。最初はそんなもの無くても良いかなと思っていましたが、規格表を見ると下記のように「他の電極よりも最低30秒は先に点火すべし。」となっています。


       


ところがもはやシャーシの中はいっぱいで、リレーやその周辺回路の入る隙間はありません。そこで個人的なアンプと言う事もあり、B電圧は別のスイッチで30秒待ってからONすることにしました。まさにアナログの極地です。

本当は電圧計も取り付けたいのですが、手持ちの1500Vの物は大きすぎて取り付けられません。探すか作るか、電流計にするか、また今さらどのように穴を空けるか、のんびり考えます。

感電防止用にアクリルチムニーを取り付けた最終的な状態が下の写真で、この部分には直接高温の排気が当たらないので、アクリルでもOKなのです。


  


アクリルチムニーは今まで禁じ手とされていましたが、それは送信機の場合で、オーデイオにおける可能性はどんどん広がるでしょう。要は使い方だと思いますし、いろいろカットしたいので卓上丸ノコも用意しました。


                


かつて大出力アンプのソケット周りに穴をポツポツ空けて、空冷効率を上げたような気になった事もありましたが、あれははっきり言っておまじないの域を出ておらず、それよりも周囲の対流を考えるべきです。オーディオ真空管マニアにとって、最もイヤな言葉は強制空冷なのでしょう。

音質は一言で言えば高解像度で余韻のディテールが違って聞こえます。パーカッションのリアルさは思わず後ろを振り返ってしまうほどでした。

出力のゆとり、低歪率、DF値の高さなど、完全無帰還アンプとしてシングルはもとよりPPと比べても世界のトップに位置する水準なので当たり前とは言え、やはり基本性能における物理的特性の良さは音に出ます。

あとはお好みでNFBなどを掛ければよいのですが、それはテーブルのお客様がコショウや塩を足すのと同じだと思っています。





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4 4CX250って、こんなヤツだったんだ・・・。
5 X管によるHVTC最後の仕上げ