前回はFM検波などについて調べました。ではオーディオ的にはどうでしょうか。まず行ったG2とプレートをつなぐ3極管接続では、残念ながらG1、G3ともに電流制御機能がなくなり、増幅作用が消滅します。

この理由を探るため、G2電圧の変化によるプレート電流の変化を計測してみました。これによると、プレート電流の増加傾向はあるものの、いわゆるG2の機能とは性質が異なり、かなり電流変化に対し低感度なようです。


             


その後いろいろな電圧の掛け方を試すなか、G3電圧を10〜20V程度にすると、肩特性の良い5極管らしい特性が得られるとわかりました。

ただし20Vを越えると、プレートからの2次電子を受けるためか、4極管と同様、肩特性部分に負性抵抗曲線が出てしまいます。

またプレート電流はG2電圧に依存するため、G2電圧は高目の方がGmが増えて好ましいのですが、実用的動作点のプレート電圧を考慮して、Eg2=150Vとしました。


             


上のグラフを見ると、バイアス電圧が−6Vの時あたりで、かなり直線性が良いと分かります。そこで良好そうなポイントを中心に、2種類のロードラインを引いてみました。


             


               


この計測結果から、Eb=250Vのグラフ(上図)をもとにバラックセットで実際の回路を組んでみると、バイアス電圧5,7Vの時に、30Vrmsで1%、設計最大電圧50Vrmsで2,5%の歪率となります。

以上の実験から6BN6は、Eb=250V、RL=25kΩという低目の電源と負荷抵抗でも、大きな出力電圧を低歪率で出せる、電圧利用効率の高い球になるといえそうです。

またゲインは設計どおり25倍ちょうどでしたが、Eb=325V時のRL=50kΩ動作では、ゲインが50倍となり、設計値以上の90Vrms(ピーク値126V)で3,2%を計測しました。


        


この数値は、ラジオ技術社が出した「オーディオ用真空管マニュアル」に掲載されている抵抗結合増幅器データと比べても、相当優れているとわかり、期待がふくらみます。

10V以下で歪が増えているのは、クリップコードなどでカーブレーサーアダプター上に組んだ、バラックセットによる空中配線の引き回しノイズが原因と思われます。

また下の写真がRL=25kΩ10KHz50Vrms、及びRL=50kΩ90Vrms、100Vrms出力時の正弦波形です。


  

  


周波数特性では高域のカットオフが44KHz及び26kHzとなっています。さらに各電極はシールドされていますので、この値ならばオーディオにおいても、プリアンプやドライバーなど、色々な用途に充分通用するのではないでしょうか。


       


今回の接続方法で6BN6が電圧効率の良い特性を示す理由は、クオードレイチュアグリッド、が通常のG2に似た動作をする一方、アクセラレーターという第3の特殊電極が挿入され、肩特性の非常に優れているポイントを特定の電圧で作り出したためと思われます。


           


また直線性が優れているのは、リミッター効果により、バイアス電圧が浅くなった時でもGmの上昇が抑えられている本来の特徴に、G3のバイアスが加わることで、全体的に均一なGm特性となるためと考えられます。

また50kΩ負荷では、下のようなパワフルなパターンも考えられます。


           


ということで、ここまでの計測や実験から、6BN6はかなりのポテンシャルを持った、優秀な失業者であったように感じてきました。

脚光を浴びたデビューから一転、長年の失業生活に甘んじてきた6BN6の人生は、これからどのような展開を見せるのか。今後を乞うご期待!




つづく

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その2 オーディオ用途への就職