最近のヘッドホンはインピーダンス30Ω程度でしかも1Wもあれば充分なため、真空管によるシングルOTLが設計できます。使う球は最近安く目にする6S19Pとします。

この球は内部抵抗が低いので誰もがOTLアンプを思いつくでしょうが、それはあくまでも真空管の中では低い方であるというだけで、OTLパワーアンプに課せられる負荷8Ωはあまりにも過酷なのです。


  


負荷インピーダンスと仕事の関係で、比較的分かりやすいのが階段でしょう。同じ2階に上がるという行為でも、負荷の掛け方によってまるで苦労が異なります。


   

  


ところがヘッドホンの高いインピーダンスと低い要求出力は、真空管の守備範囲にギリギリ入ってきます。波形の上半分はプレート損失(Pds)を越えていますが、DC入力ではないのでPPの時と同様、プレート損失4倍拡張理論によって40WのPddライン内に収まりOKとなります。


      


とはいえこの動作ではやや非力感がありますので、少々大げさではありますがパラレル動作とすると下のようになります。プレート電圧が低いので電源トランスの負担もそれほどではありません。


      


これらをもとに作ったのが下の回路図となり、プレート電圧はたった80Vです。高電圧のアンプばかり作っていたのでそのリバウンドかもしれません。負荷に使うチョークは東栄のCH−1150という安い物(1個735円)なので、チャンネルあたり2個使います。


             

チョークを2個使うのには別のメリットもあります。つまり接続を逆にすることによって、外部からの特に電源トランスからのリーケージフラックスを打ち消すことが出来、ハムが減少するわけです。


 


電源トランスはトランジスタアンプ用のものを使い、ヒーターは6S19Pの直列DC点火による12Vとして、バイアス電圧にも流用します。

ヘッドホンアンプはノイズ対策が重要ですが、こうしたストレートな2段増幅でも通用するのか、結果が楽しみです。





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