この本を読んでいただく皆様へ

 

大きめの部品が、ゆったりと配線された真空管アンプは、
まるで「電気のからくり細工」のようです。

そんな電気のしくみを理解したくなり、電気の入門書を買ってみました。

 

ところがどの本も家族向けハイキングコースから、いきなり冬山登山になるがごとく、

やさしそうな書き出しスタイルはすぐに消え失せ、
一気に数式中心の文体になってしまいます。

 

またせっかくのイラストも、イラストレーターと著者とのリンクが弱く、
サポート機能が充分発揮されていません。

 
そこで今回は
 
@文章力を尽くす。 A的確なイラストを自ら作成し、 B適所に配置する。

 

という点を重視した、電気の世界の探検絵本作成を目指しました。

余談ですが、このようにしたく思ったきっかけは、
イタリアで買った電気の入門書のイラストが、とってもアートだったからです。

 

 

    

 
 

 
 

【1】電気の3要素

 

A)電気を知るのに必要な3つの部品(3要素)は「電池」「電線」「抵抗器」

 

   1 電池は、電気のおおもと「電圧」を作るもの。
 

   2 電線は、電気が流れる通り道で、「電流」が流れています。
 

    3 そして抵抗器は、電気の流れをじゃまするものとなり、文字通り「抵抗」です。
 

ところで上に書いた3要素のうち、1と2はそれとなくわかるものの、

なぜ3のような「じゃまもの」が必要なのでしょうか。
 

さあ、それでは電気の世界に入ってゆきましょう。

 
 

B)電圧とは?・・・
 
 この質問自体、実に単純ではありますが、端的に説明する事は意外と難しいかもしれません。
  何故なら水圧や風圧は日常的に体感出来ますが、電圧はイメージしにくいからです。

 

水に大きな落差を持たせて落とすと、強い勢いで流れ落ちます。
 

強い勢いとは、大きなエネルギーをさし、大自然の例では、滝や激流がこれにあたります。

 
 

             

 

      
 

一方あまり落差の無い川の下流などは、水のエネルギーが小さく、沼や池、水たまりなどは、ほとんどエネルギーが無いといえます。
 
 

             

 

     

 

水の例では高低差が増せば、流そうとするエネルギーも大きいという訳ですが、同様に電圧とは、
 電気のエネルギーの大きさ、
つまり 電気を流そうとする、勢いの強さ をあらわし、単位はV(ボルト)で表します。

 

由来はイタリアのボルタという物理学者の名前からきています。

 
 

C)電流とは?・・
 
 これも水の例によって説明します。
 

電圧は流す勢いの強さですが、一方流す量も大事です。
 

バケツの水を満杯にするのに1杯目は60秒もかかっていたので、2杯目はもうひとつ蛇口をふやし、半分の30秒で満杯になったとすると、
 1秒間ごとに流れ出る水の量が、2倍に増えた事になります。

 

 

  

 
 

同様に、 電流とは1秒間に流れる電気の量 が、どれ程かを表していて、単位はA(アンペア)で表します。
 

由来はフランスのアンペールという物理学者の名前からきています。
 

電圧は電気を流そうとする強さ、電流は1秒間に流れる電気の量。では電流を妨げる抵抗とは、どのようなものでしょうか。 
 
 

D)抵抗とは?
 

川は、上流と下流の、高低差を水のエネルギーにして、川幅にみあった水の量で流れます。
 

ここに水車を置くと、水車の羽根は水の流れにぶつかり回ります。

 

川の水からすれば、水車の羽根は、流れのじゃまものですが、おかげで水車は回り、これがいろいろな仕事をするわけです。

 
 

 
 

同様に電池のプラスとマイナスの間に電気の流れを妨げるものがあると、電気は熱や光や磁石となって仕事をします。
 

つまり 抵抗とは、電気が流れた時に、エネルギー差を取り出し、仕事をしてもらう場所 で、単位はΩ(オーム)で表します。
 

由来はドイツの物理学者オームからきています。

 

ところで電池に寿命がある理由は、底でつながった、仕切りのある水槽であらわせます。
 

図のように、プラス側から出てきた電気が、モーターや豆電球の中を流れた後マイナス側に貯まって、

プラスとマイナスのエネルギー差がなくなるからです。
 

 

 

 

 

電池に何もつながない時とは、プラス・マイナス間に、空気という電気の流れない物質(絶縁体)をつないだ場合で、

なにも仕事をしません。

 
 

 

 
 

 また、電池のプラスとマイナスを直接電線でショートさせた時は、一気に大量の電流が流れ、

 電池はあっという間に使えなくなります。これは抵抗がゼロの時です。
 

 

              

 
 

 抵抗は無限大でも、ゼロでも、そのエネルギー差を効果的に取り出す事が出来ず、意味がありません。
 

 しかし、程よい値の時には、うまく利用できます。

 

 また、新品の電池でも、エネルギー差を発生させないような接続では、電流は流れません。
 
 

 

 

さらに電気がその姿を変えていろいろな機器を働かせているのではなく、電気の持っている「エネルギー差」

だけが仕事をしているのだという事を忘れないで下さい。
 

水力発電所では、ダムから落ちる水のエネルギー差で、発電機が回ります。

 

水はダムから落ちた後も水のままです。
 

ただ水の高低差が持つエネルギー差だけが仕事をしたというのと同じです。

 
 

E)電力とは?
  

 川の水を例にして、どのような状態ならば、より多くの仕事をするかというと
 

     @ 流れる勢いが強い

     A 流れる量が多い

 

 このような場合、どちらかが2倍になると全体が2倍になるので、掛け算と同じになります。
 

 そこで、この二つを掛け合わせた物を「仕事をする力」とします。記号はパワーの「P」で表し、単位はW(ワット)です。

 
 

 

 
 

 ワットはイギリスの発明家で、電気ではなく機械の発達に貢献した人ですが、パワーの概念は蒸気の力や水の力だけでなく、

 電気にも用いられることになりました。ですから電気での計算式は、
 
              「流れる勢い」
×「流れる量」、  つまり  電圧×電流=電力  です。
 
 先程の説明で、おだやかな川の下流はエネルギーが少ないと書きましたが、水量が大きければ、全体のエネルギーは大きいのです。

 
 

F)そして必要となるオームの法則

 

このような  「抵抗=電気の仕事場=電気機器」  の様子を、数字で表現する方法について、考えてみましょう。

 

なぜ数字で表現する必要があるかというと、「スゲェ!」とか「イマイチ」などの言葉は、確かに雰囲気はつたわります。
 

しかしこれがレストランのメニューで、値段の所に書かれていたら判断できないのと同様です。

 

まず、電池に機器をつなげる代わりに、「抵抗器」という便利な物を使います。
 

抵抗器は炭素など比較的電気の流れにくい物質の両端に、他の部品をハンダ付けするための電線、「リード線」を取り付けたものです。

 
 

 
 

抵抗の単位、即ち「流れにくさ」の単位はオーム(Ω)です。では抵抗器と電池、電線を使って、いろいろな例を示しましょう。
  まず使うのは基準的な単位を持つ1オーム(1Ω)の抵抗器です。
 
 

    

 
 

また、私たちが購入する電池の電圧は普通1,5ボルトですが、考え方を簡単にする為、1V(ボルト)という事とします。
 

その電池に抵抗器をつなげた時、流れる電流が1A(アンペア)なら、その抵抗器は1Ω(1オーム)という流れにくさ=抵抗値を持つ、と決めてしまいます。

 
 

 
 

(四角の中で、電気が回って流れるようになっている為、電気の回る路、電気回路と呼びます。)

 

この時出てくる1ボルト以外の2つの数値、つまり1オームと1アンペアをかけあわせると
 

1(オーム)×1(アンペア)=1(ボルト)

 
 という式を決定付けることになります。
 

また電流が1オームの2倍流れにくくなるように、2オームの抵抗器に取り換えると、電流は、半分の0,5アンペアになります。
 

この時出てくる2つの数値「2」と「0,5」を掛け算すると

 

2(オーム)×,5(アンペア)=1(ボルト)

 
 

 

 
 
 と決定付けることになります。
 
 さらに1万倍流れにくくするため、抵抗器を1万オームにすれば電流は1万分の1アンペアとなります。
 

この時も出てきた2つの数字「1万」と「1万分の1」を掛け算すると、
 

    1万(オーム)×1万分の1(アンペア)=1(ボルト)

 
 

 
 

 という具合に、抵抗と電流をかけると、いつも元の電圧「1ボルト」を表しています。
 

 つまり       「抵抗」×「電流」=「電圧」
 

 という、3者の関係が、オームの法則なのです。

 

 
 「電圧」という言葉を記号で表現する時は、「E」で表し、具体的な単位はボルト「V」で示します。
 

例えば乾電池の電圧をEとして、それが1,5ボルトだとしたら
 

E=1,5V  と書きます。
 

背の高さで例えると、高さ(HIGHT)の「H」を、具体的な単位「cm」で示すのと同じで、身長160センチなら
 

H=160cm と書きます。
 

 
 「電流」は「I」で表し、具体的な単位はアンペア「A」で示します。
 

しつこく説明すれば、体重のウェイト(WEIGHT)を「W」で表し、具体的な単位を「Kg」で示すのと同じです
 

 

「抵抗」はレジスタンスの「R」で表し、具体的な単位はオーム「Ω」で示します。
 

 

3者の関係は次の3種類の式で表すことができます。
 

といっても実は1つの式を、掛け算や割り算の約束で変形しているだけですので、どれか1つだけ覚えていれば良いでしょう。

 

                   @「I×R=E」

 
この式の意味は「電流(I)と抵抗(R)を掛け合わせると、抵抗につないだ電池の電圧(E)になる。」ということです

 

 例えば、2Aの電流が5Ωの抵抗に流れていれば抵抗につながっている電池の電圧Eは

 
 


 
 

            2A×Ω=10V であることが測らなくてもわかります。

 

                  A「E÷R=I」
 

この式の意味は「電圧(E)を抵抗(R)で割れば抵抗に流れている電流(I)になる。」ということです。

 

例えば10Vの電池に5Ωをつなぐと流れる電流Iは
 
 


 

10V÷Ω=2Aです。

 
 

内容が分からない電気回路で、5Ωと書いてある抵抗器の両端の電圧をテスターで計ってみたら、10Vでした。
 

そこでこの抵抗器には、2Aの電流が流れている事になります。

 

                  B「E÷I=R」
  

この式の意味は「電圧(E)を電流(I)で割れば抵抗(R)の大きさがわかる。」ということです。
 

例えば10Vの電池を判らない抵抗につないだら、2Aの電流が流れていれば抵抗の大きさRは 
 
 

 


 

R=10V÷2A=5Ωです。

 
 

 さらに電圧と電流を掛け合わせたものを電力といい、記号はパワーの、P単位はワットのWで表します。

 上の図では10Vの電圧が2A流れているので、電力Pは

 

P=10V×2A=20W
 

となります。家庭用のコンセントは2000Wまで使えて、電圧は100Vですから
 

        P=100V×?A=2000W

       ?A=2000W÷100V=20Aまで流せることになっています。

 

 

【2】横に並べてつなぐ「並列」と、1本たてにつながる「直列」の2種類について

 

  A)抵抗の並列
 

抵抗器を横に並べてそれぞれ隣どうしのリード線をつなげた時、これを並列接続とかパラレル接続と呼びます。
 

3Ωの抵抗を3本並列につなぎ、あたかも1本の合成抵抗器のように考えると、その抵抗値は3分の1の1Ωとなります。

 

なぜでしょうか。

 
 

 
 
   (3オームの抵抗器3本を並列接続した合成抵抗器)

 

たとえば1Vの電池に3Ωの抵抗(これをR1とします)をつなぐと、そこに流れる電流 I1 の値は
 

     1V÷3Ω=(1/3)A です。
 

同じ電池にもう1つ、やはり3Ωの抵抗、R2をつなぐと、この抵抗の中に流れる電流 I2 の値は
 

     1V÷3Ω=(1/3)A です
 

さらにもう1つ、3Ωの抵抗、R3をつないでもこの抵抗の中を流れる電流I3の値は、やはり
 

     1V÷3Ω=(1/3)A です
 
 

 
 

そこでR1とR2とR3の電流を合わせると
 

     (1/3)A+(1/3)A+(1/3)A=1A 
 

となり、この合成抵抗に流れる電流は1A、つまり1Vの電池に1Ωの抵抗をつないだ時と同じになります。
 

そこでこの合成抵抗器は1Ωと考えてかまわない事がわかります。

 

(一見違ってみえますが前の図と下の図は全く同じ接続です。)
 
 


 
 

ところで、こんどは3ΩのR1と、2ΩのR4を並列につないだら、
この2本でできる合成抵抗器の抵抗は何オームになるでしょうか。
 

R1の電流は   1V÷3Ω=(1/3)A

 

R4の電流は   1V÷2Ω=(1/2)A

 

そこでR1の電流とR4の電流をあわせると
 

  (1/3)A+(1/2)A=(5/6)A 
 
 

 
 

1Vの電池をこの合成抵抗器につないだ時に流れた電流が(5/6)Aなので、抵抗値は
 

    1V÷(5/6)A=(6/5)Ω=1,2Ω となります。
 
 

 
           つまり並列の合成抵抗を求める時には、

 

    1、まず1Vの電池につないだ時の電流を算出するため、分子が1(1V)で、
       分母がそれぞれの抵抗値(Ω)である分数を作ります。
 

    2、次にそれらの分数を足し算することにより、電流の合計値を算出します。
 

    3、最後に、抵抗は電圧÷電流ですから、1V÷電流値つまり分子と分母を
      ひっくり返せば、合成抵抗の値が計算できる、ということになります。

 

 
 
 

B)抵抗の直列
 

   つぎに、抵抗器を1本の線になるようつなげると、これを直列接続とかシリーズ接続と呼びます。

 
 

 
        (3Ωの抵抗器3本の直列接続)

 
 

1Vの電池に、3Ωの抵抗R1、R2、R3を3個直列につなぐと、電流が流れます。
 

この状態は入り口がひとつ、出口もひとつの1本道なので、途中から増えたり減ったりすることはありえません。

 

つまり、どの抵抗にも同じ電流が通りますので、この電流をとりあえずIとします。
 

すると、R1の両端の電圧は、電流と抵抗の掛け算で
 

      E1=I×3Ω これをE1とします
 

R2の両端に起きる電圧E2は
 

      E2=I×3Ω
 

R3の両端に起きる電圧E3は
 

      E3=I×3Ω
 
 

 
 

このとき3つの電圧を全部合わせたものが、もとの電池の電圧1Vにつながっていますから
 

     E1+E2+E3=1V
 

そこで
 

     E1+E2+E3=(I×3Ω)+(I×3Ω)+(I×3Ω)

        I×(3Ω+3Ω+3Ω)

        =I×9Ω

        =1V
 

 となって電流Iは1Vに9Ωをつないだ時と同じことになります。
 

そこで直列合成抵抗は
 

   R1+R2+R3=9Ω
 

 という単純な足し算で求めても良いようです。

 またこの時電流Iは
 

 I=1V÷9Ω=(1/9)A となりそうです。
 

 ところで3ΩのR1と2ΩのR4を直列にしたらどうなるでしょうか。

 そこでとりあえずこの1本道に流れる電流をIとして考えると、

 

 R1両端の電圧は  E1=I×3Ω
 

 R4両端の電圧は  E4=I×2Ω

 

 E1とE4を足した電圧が、電池の電圧1Vなので
 

     E1+E4=(I×3Ω)+(I×2Ω)

       I×(3Ω+2Ω)

       I×5Ω

       =1V
 

 となって電流Iは1Vに5Ωをつないだ時と同じになりますから

 直列合成抵抗の値は単純に足し算すれば良い事がわかります。
 

 ちなみに電流Iを計算すれば
 

    I=1V÷5Ω=0,2A  です。
 
 

 
C)電池の並列

 ,5Vの電池のプラスどうし、マイナスどうしをつなげて並列接続にし、両端の電圧を測って見ると、
 何個並列にしても1
,5Vのままで変わりません。
 
電圧が変わらないのに、電池をたくさんつなげるのは、一見無駄なようですが、その分電流がたくさん流せます。

 
 

 
 

これは一般家庭の電気消費量が増えるに連れて、発電所をたくさん建設するのと同じです。

発電所が増えてもコンセントの電圧が高くなるわけではありません。

 

より多くの電気製品がつなげられるようになる、
 つまりたくさん電流が流せるようにして使える電力を増やすという事なのです。

 
 

 
 

電池はいくらでも電流が流せるわけではありません。
 例え新品の電池でも大量に電流を流すと電圧が下がってしまいます。

このような時、電池の並列接続が効果的になります。

 

電気の実際の仕事は電圧と電流を掛け合わせた電力で示しますが、
 この場合は電圧が一定で電流が増えた場合の例です。

 
 

D)電池の直列

次に電池を縦に積み上げるように直列接続すると、両端の電圧は積み上げた電池の数だけ増えて行きます。
 

,5Vの電池なら2個で2倍の3V、1万個なら1万倍の1万5千Vになります。

 
 

 
 

 ただし流せる電流は1個のときと同じです。この場合電圧を増やすことによって電力が増えたことになります。

 電流も1万倍にしたければ、1万個直列した電池を1個の電池と見たてて、それを1万個並列にすれば良いわけです。

 

 この時必要な電池は1万×1万=1億個になり、電力も1億倍になります。