私にとって以外だったのは、多くの人々がビーム管や5極管の送信管に対し、多極管のままシングルアンプを作り始めていたことでした。
それでなくとも多極管は2次歪みが多く、また内部抵抗も高いので、出力トランスのインダクタンス不足から、低音が出にくいシングルアンプになります。
おまけに送信管はポジティブグリッド動作が中心なため、受信管以上に低く抑え込まれた数値が、いわゆる第2グリッドの最大電圧として表示されています。
ですから文字通り「送信管規格」で受信管として使ってしまうと、球本来のポテンシャルよりも、内部抵抗をさらに上昇させ、カットオフ特性や高調波歪みも悪化させてしまうのです。
しかしそれほどに送信管の姿は、多くの真空管マニアにとって、すぐにでもアンプ作りをせずにはいられない魅力を持っていたのでしょう。
4−65Aのビーム管特性 第1グリッドのマイナス側はほとんど書かれていない
そうした「送信管的条件」をだまって呑み込む真空管マニアの生真面目さは、純粋に素直さを感じ、決して軽んずべきではないと思います。
しかし、せめてオーディオアンプ、つまり受信管として使うなら、KT88の定格などを参考に、第2グリッド電圧を600〜700V程度まで上げるという判断もあって良かったのではないでしょうか。
何故もっと早く第2グリッド電圧の正体を伝え広められなかったのか。自らの説明に対する工夫不足と、表現力の足りなさを感じます。
そうした意味も含めて、今回は4−65AをHVTCできっちり使い、この球の魅力と、多極送信管の実力を思う存分お知らせしたいと思います。
まず下のカーブをご覧いただくと、素晴らしいカットオフ特性を持っているのが分かると思いますが、さらに3定数に至ってはオーディオ用3極管のお手本のような値になっています。
これを基に負荷抵抗を10kΩ程度で動作させれば、ダンピングファクターは6〜7程度となり、歪みもNFBをかける理由が見つからないレベルに仕上げられるでしょう。
出力は15W前後が無難な線とはいえ、2A3PPに相当する値ですから、決して小さくはないでしょう。ドライブ電圧は少なくとも100V程度(RMS70V)で、カットオフ特性に合わせてドライバーを選びます。
電源は無信号時ステレオで100W消費しますから、200VAクラスが良く、プレート赤化に備えてバックアップ付きの強制空冷も必要です。同様にプレートキャップもヒートシンク付きで長期安定動作を狙います。
とりあえずプレート入力を45Wとすると、プレート電圧750V、プレート電流60mAという線が有力だと思います。プレートはどのような色になるのか、またプレートキャップのデザインはどうするのか楽しみです。
また上のグラフにEf=6Vと書かれている以上、エコヒートもありそうだと察する方もいるでしょう。というわけで宝石のような特性を持ったこの球を、中途半端にに扱うのは、出来ることならやめて欲しいというのが、私の望みです。
というのも、このような球を多極管のままシングルアンプにした場合、倍音付加とアンダーダンピングにより、ナロウなレンジ感や混然とした低音が目立ち、もはや楽器用アンプになってしまうからです。
耳にきつい音を指して「スピード感がある」といったり、そうしたものを良いと感じるのは各自の勝手ですが、やはりきちんとした物も知っておくべきだと思います。
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かなり以前、我が家にオーストラリアから来た女性が、英会話のレッスンに来てくれていました。ご主人が日本人で、仕事の関係から再びオーストラリアへ戻るというので、最後の日は雑談となりました。
その中で彼女の日本の印象という話になり、お寿司が話題に乗りました。彼女は魚も好きですが、お寿司に対してとりあえず食べるけど、特段の印象はないようです。
その後もお寿司について話すうちに、何か噛み合わないものを感じたので、よく話を聞いてみると、なんと彼女は、お寿司というのはコンビニのオニギリの事だと、ご主人に教え込まれていたのでした。
そこでお寿司の図鑑(我が家にはあった)を取り出して見せると、彼女は驚嘆して、絶対主人に本物のお寿司を食べに連れて行ってもらうと言って帰りました。帰国ギリギリで彼女は間に合ったでしょうか。
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まだ日本食が注目されていない、40年近く前のこんな出来事を思い出しました。
11月29日ようやく退院できましたが、体重10キロ減の影響は大きく、なかなか体が動かせません。今後の予定は、実際にDC入力をプレートにかけて、プレートの色や温度などを見ながら、具体的なカーブや動作点を検討します。
ただしスタミナもないので、しばらくは、かなりのスローペースです。
つづく
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