プレート電圧600Vという設定は自己バイアスのカソード電圧10〜20Vをを考慮すると、250V両派整流用のトランスが使えるので、探すのに苦労しません。
プレート電流はステレオで120mAですから、倍の250mA用で間に合いますし、ヒーターも6,3V2Aが3系統あれば十分です。
問題のOPTですが、プレート電流60mAという少なさに期待して、おなじみSELのT4560を7Kとして使います。
6C33Cの時は、許容値を少し超えた130mA、2,5Kで使用した結果、−3dBポイントが8Hzでしたから、単純に3倍すると、低域限界としては少し高めの24Hzになるでしょう。
下が回路図で、6AU6のg2抵抗は歪率の値から決定しました。
下が歪率と周波数特性です。なんと10Wでも歪は1%を超えず、最大出力12Wでやっと1,2%であるにもかかわらず、現在(2011,9,22)この球は新品が
ネットオークションで980円から入手できるのです
これが300Bの特性だったなら「さすが300Bだけのことはある。」などと言われるでしょうが、1000円前後で買えてしまうGU-50やFU-50では思わず黙ってしまうのではないでしょうか。
下の写真左に見える、いかにもジャンクといったカットコアタイプの電源トランスが、管球アンプ用ではなく12V4Aの端子しかなかったため、6AU6はヒーターを直列にし全て直流点火としました。またプレート電流が少ないせいか、低域のカットオフは12Hzとなりました。
残留雑音は0,3mV、DFは2,5程度で、音質は歪感が少なく分解能の良いキレイな、どちらかというと近代的な感じです。別の言い方をすると、こんな球ばかりだったら負帰還はあまり普及しなかったろうなと思うほどです。
よって欲を言えば最初からパラシングルで設計して、もう少しガンガン鳴らせるようにすれば良かったかもしれません。
このようにHVTCは、メーカーやそのスジの「先生」たちも知らない掘り出し物を、特殊なパーツも凝った回路も必要無く、実にシンプルなスタイルで生み出すことの出来る活用法ですので、ぜひ皆さんもいろいろな球で試してみてください。
シンプルイズベストって、意外と出来そうで出来ないものなんです。また今回はステレオで製作しました。
ちなみにOPTには大きな高圧絶縁性と、電力はそのままで極端なインピーダンス変換を行える独自の特徴がありながら、そうした定格を持つ高インピーダンス型シングル用OPTは、僅かしかみられません。
もちろんその理由は、対応する真空管が今まであまりに少なかったからですが、HVTCによりその環境が一変します。
その日のために硬派(高派)を目指すみなさんは、気軽に500V超えのケミコンを組み慣れるようになってください。その意味で600Vという電圧は丁度良いのではないでしょうか。
ケミコン2階建てという作業内容は、図面上簡単なように見えても、同一容量を確保するのに4倍の手間となりますので、350〜450Vクラスで300μF以上の掘り出し物を、、日頃リサーチ&ストックしておくと便利です。
また、1KVの危険性を声高に叫ぶ記述も時折見ますが、500Vはおろか300Vでも感電したら命に関わります。真空管アンプ内部には、感電しても安全な高圧なんてありません。
むしろ高電圧危険の声に乗って、「400V位は、それよりも
安全な電圧」と思ってしまう心のトリックにこそ、危険が潜んでいることをお忘れなく。
この次はちょっと変わった冷却方法をご紹介します。
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