今回計測依頼された球はe-bayなど海外のネットオークションで安く出ている直熱5極送信管GU81-Mです。

規格的にはP250の系列のように見えますが、それらの球に比べるとソケットも時々出品されているので、実作自体さほど困難ではありません。

旧ソ連や旧東欧の船舶用に大量のストックがあったのでしょうか。またP250等とどちらがオリジナルだったのでしょうか。時代やロマンを感じます。


         


    

特にこの系統の球はg3がトップとソケット2箇所に引き出されているのため、C3をオブジェとして用いている場合が多いようですが、それは3結において面白い使い方ではありません。

例えばソケット側でg2とg3(4番と6番)を結線し、プレートキャップ側で100Ωを通じてC3につなぐという、ツインキャップ実用法が大げさでマニアックです。

またこの方法だと、調整中キャップを付け忘れてもg2に過電流が流れないので、そそっかしい人にはおススメです。(自分か?!)





唯一この球の個人的に辛いところは120Wというヒーター電力で、今となってはLED電球4Wを30個分・・・・ずいぶん明るいだろうなー。という感じでしょうか。

例えばダッシュ管の4−400Aで75Wですから、はるか及びません。そう言えば4−250Aのフィラメントが同じ75Wというのもエコヒートバカからすると納得いきません。


         


もちろんプレート電圧2000V、プレート電流150mA程度で100W近い出力も出せるでしょうが、重量、大きさ、消費電力、夏場の熱などの点で「マニアの城」御用達となるかもしれません。

ということで早速3結特性を測ってみました。プレート電圧が1400Vを超えてもバイアス電圧は400Vあたりを動めいています。


        


次にエコヒートの観点から測ったのがフィラメント電圧10V時です。特性にはあまり差がないのに、25Wもフィラメント電力が低下することがわかりました。


        


そこで10Vのものを基準に3結時のgmやμなど3定数を測ってみました。

エコヒートは、A1シングルのような小電流動作では、フィラメントのトリウム層破壊が起き難いはずである、という身勝手な楽観論から来ています。


        


図からも判りますが、結果gm、μどちらも低めなためドライブが大変そうです。その中で比較的使い易そうな1000V以下による動作例を考えてみました。OPTも5kΩ及び6,5kΩと入手が容易なはずです。


         


         


しかしプレート損失450Wの球を使っているのに、これではやや遠慮しすぎのような気がして、もう少しパワーをぶち込んだ場合も考えてみました。

確かにどれほどの定格で使おうと本人の自由ですが、球の持つそれなりのポテンシャルを十分活用しないのは、オブジェ的で好きになれません。

珍しい球を他人より早く使ったというだけのアンプ、中国製で真空管は見えているものの、実はパワーICで鳴らしているアンプなども、その延長線上に感じます。


         
         


         


このように若干ドライブ電圧は高いものの、送信管としては普通のプレート電圧と低めの負荷抵抗により、比較的大きな出力が出せるため、ある意味使いやすい球なのではないでしょうか。