ご存知のようにSEPP回路における動作は上の段がカソードフォロアのためゲインは1倍。また下の段はプレートフォロワとなっているため、ゲインはそれなりに発生すると言われてました。
そこでこのアンバランスを打ち消すべく上の段にはブートストラップという正帰還を掛け、場合によっては下の段に負帰還を掛けたりしているわけです。
しかし本当にそれほど上下でゲインの差があるのでしょうか。というのも真空管OTLは電源電圧の利用効率が非常に悪く、ほとんど最大電流のためだけに無駄な電圧のかさ上げをしているからです。
例えば8オームで10W出すには本来電源に40V(±20V)もあれば充分な一方、その程度のプレート電圧では真空管に充分な電流が流れません。
またこの状態で猛烈なミスマッチングの負荷をつないでいることにより、ロードラインはほとんど垂直な線となり、電圧利得(ゲイン)はあまり発生しないのではないかと予測できるわけです。そこで特性カーブからゲインを観測することにしました。
使用する球は12GB3Aの4本パラレル動作を前提にすると、8Ω負荷では30Ωのロードラインになります。
上の図によると入力電圧45Vの時に出力24V、つまりプレートフォロワ側であっても出力段のゲインは1倍以上にならず、0,53倍しか無かったことがわかります。
一方カソードフォロワ側を見ると、相互コンダクタンスの値より出力インピーダンスを50Ωとすれば、30Ω負荷に対する仕上がりの増幅度は0,37倍となり、その違いは1,43倍になります。
つまり今まで定番のように言われてきた、カソードフォロワー側のゲイン=1倍や、プレートフォロア側のゲインが数倍といった解説は、低負荷真空管OTLと高負荷真空管OTLを混同してしまった人々の間違いだったわけです。
それはともかく、この程度の差であれば下段に若干のNFBを掛けるだけで済むような気がしますし、場合よっては初段の2次歪が修正してくれるかもしれません。
早速実験のためバラックセットで測定してみます。といっても実際はカーブトレーサー用に自作した
特性カーブアダプターを使い、可変プレート電源は内蔵されているg2用定電圧電源を流用しました。簡易実験回路は下の様になります。
この回路で信号を10V入力すれば5,5Vほどが出力されるはずなのに、バイアス電圧ー45V時、何度測りなおしても2,5V弱しか出てきません。
つまりゲインが0,25倍というわけですが、これは一体どういう事でしょうか。その原因を探る手段として、次の4段階を順番に確認してゆきます。
@入力電圧がバイアス電圧の、どの範囲(場所)で動作しているかを、大まかに分割する。
A分割された動作範囲の違いによって、gm変化はどう変化するか。
Bgmの変化により起きる内部抵抗、つまり出力インピーダンスの違いを見る。
C出力インピーダンスの違いで、ゲインはどのように変化するか。
そこで特性カーブから入力レベル状況ごとのゲインを出し、実際のアンプにおける動作状態をを分析することにしました。
つづく
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