ということでCL結合の基本回路構成とプレート電流特性を突き合わせながら、電圧や抵抗値を決め、下のような6P3Sドライブによる回路図を構成してみました。

この回路の長所は、バイアス電圧が容易に変更できる点で、今回のような実験回路では、動作条件の変更が容易に行えます。

また初段回路とドライバーの電源電圧が同じで、電源作製の手間が減るという点です。ただしチョークコイルやバイアス回路の内部抵抗は十分低くする必要があります。


 


グリッドチョークとバイアス電源の内部抵抗を低くする必要がある理由は、信号がプラス側に振れた時、下の図のようにグリッド・カソード間が、ダイオード動作となるからです。

このチョークコイルは、4−400Aシングルアンプのプレートチョーク用に買っておいたもので、サイズ、スペックともに今回の回路に向いています。


              


つまりバイアス電圧がマイナス方向にシフトしてしまうのを、このチョークコイルと低内部抵抗のバイアス電源により防ぐわけですが、その様子を下の4コマで図解してみました。

また807による実験はこちらにあります。

Cの値は小さいほどチャージ分が少なくて良いのですが、あまり少ないと低域のカットオフ周波数が上昇し、低音域が出なくなってしまいます。





このようなグリッド電流を利用した動作として、逆にグリッド抵抗を数メグΩまで高めた、グリッドリークバイアスというものもあり、大入力には不向きですが、カソード抵抗やカソードバイパスコンデンサーが不要で、高感度になります。

またダイオード特性を積極的に利用した回路に、ラジオのグリッド検波回路というものもあり、先ほど同様カソードバイアス回路が不要なのと、グリッドリークバイアス同様、最も相互コンダクタンスが大きくなるグリッド電圧0V付近を使うため、高感度な点が特徴です。

CL結合時による6P3Sドライバーの動作点は下のグラフのようになっています。実際はカソードフォロア動作となり、出力インピーダンスは別の実験から180Ω前後でしょう。


           


更に今回はCL結合だけではなく、マイナス電源によるカソードチョーク直結ドライブも計画の中に入れてました。

というのも色々な検討を重ねる中、CL結合は805などμが30前後の高・中μ球に採用した時に、最も面白くなりそうだとわかったからで、μ=15の低・中μ球であるVT-127ではどちらにすべきか悩ましいところです。


 


ノグチのカソードチョークPMC−2010と130Ωの抵抗が直列となっているのは、直流抵抗を400Ωとして6P3Sのカソード電圧−20Vに対し、−40Vのバイアス電圧を作り出すためです。

もしチョークコイルのみで設計するなら、ドライバーには−33Vのマイナス電源が別途必要となります。また初段6AU6の動作ラインは下のようになります。

直結ドライブではさらにドライバー用中圧電源が必要となり、複雑化という意味において、若干不利なような気もします。


         


そしていつも迷うのが、このアンプをモノラルで作るかステレオで作るかですが、今回のOPTは意外と小さく、出力段のプレート電流もステレオで140mAですので、ステレオ仕様にします。

フィラメントの合計5V20Aは、SW電源でどうにでもなるでしょう。問題はこのアンプとKT88−CSPPアンプと、どちらを先に制作するかです。

と、ここでまた悩みが生じました。ドライバーにプラスとマイナスの両電源を用いるのは、自由度が増すとはいえ、あまりに不格好なデザインではないでしょうか。

そこで男らしく(?)、マイナス電源のみのドライバーを考えます。






つづく


その3 回路の設計