その3
これまで計測のために色々な2A3を購入しましたが、気がつくと2A3だらけになってしまいました。どちらかと言うとアンチ2A3派の私としては複雑な気持ちです。

しいて自分に言い聞かせるとすれば、6B4Gはレギュレーター管なので、ややマイナー寄りであるといった所でしょうか。


           


それはさて置き今回のアンプは若干アルテックカラーを意識して作ってみました。センターにはおなじみの2πファンを取り付け、バックアプ冷却は行いません。

電流計はほとんどアクセサリーで後日LED照明を埋め込む予定です。配置は相変わらずトランスの影響を重視して、このようになりました。


       


そして歪特性は下のように計算どおり6Wで1,8%、7Wで3,2%となりました。通常の2A3シングルによる最大出力3W程度ならば、0,64%です。

無信号時のプレート入力は約20W程度に及ぶものの、部屋を暗くして観察しても、プレートの赤化は全く起こりません。ダンピングファクターは「4」ちょうどでした。

ただし通常の負荷開放〜負荷接続によるON-OFF方では、トランスの損失も内部抵抗として出てしまうため、1次側で電圧変化を計測すると、「6」程度となります。


   


カットオフ周波数は低域で17Hz高域で38kHzとなりました。


   



ちなみに下の回路図で6N8Pのドライバー側は、バイアス調整ボリュームで歪の打ち消しあう最適値を出し、またゲインが余っていた為2段目のカソードバイパスコンデンサーは外しました。


    


もちろんこの動作において「「グリッド電流が少しくらい流れても大丈夫。」といった強力なドライバーは必要なく、プラス側に振れたらすぐにクリップしてしまうドライバーのほうが、グリッドを傷めないので安心です。

つまり出力が欲しいのなら出力管の選択も含め全体の回路構成を考えるべきで、常に高温にさらされる第1グリッドに負担を負わせるべきではないのです。

企業が効率を上げたい時、会社のシステムや方針自体を改善すべきで、ボランティア残業に頼っていたのでは、最初こそなんとかなりますが、そのうち社員が疲弊してしまうのに似ています。





このような実験から2A3という球は、ドライバーとの組み合わせにもよりますが、純粋なA1級において、6Wを2%程度の歪率で出せるポテンシャルを持っていることが分かりました。

毎度言うようですが、この値は私が2A3からこれだけの出力を引き出したのではありません。もともとの実力がこうであっただけです。

音質はそこそこ優等生的な、ありふれた物だろうと期待していませんでした。しかし実際聴いてみると、これが良いではありませんか。少し華奢(きゃしゃ)な中高音と豊かな低音が魅力で、してやられた感じがします。

プレート電圧450Vの動作も全く問題ない、というより500V以上でも平気でしょう。参考までにプレート電圧600VによるB1級PPの動作例を出しておきます。





カットオフ特性がそう悪くないため、B級でもクロスオーバー歪はそれほど発生しないようです。
いかがでしょうか、これを信じるか信じないかは、あなた次第です。







2A3の真の実力を初公開!
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