マックG4 アイアンシリーズ
その1 鉄の貴公子登場
MACデスクトップコンピューターのG4で、とても充実していた機種がクイックシルバーとMDDでしたが、今となっては過去の遺物と見る人も少なからずいるようです。
とはいえ仕事上、OS9でしか動かないバージョンのプロトゥールスを使い続けている私にとって、まだまだ現役で働いてもらいたい大切なコンピューターですから、折を見てはヤフオクでジャンクを買いあさり、パーツをキープしています。
そんなある日、安く手に入れたMACをパーツとしてバラしていると、プラスチックカバーを取り去った裸のシャーシ姿が、妙に魅力的に見えてきました。試しにそのままコーナーの取っ手を取り付けてみると、これがなかなか良いではありませんか
左がMDD、右がクイックシルバーだが、プラスチックの外装を外したシャーシ構造も美しい
そこで鉄のシャーシによるデザインをを前面に打ち出した、MDDやクイックシルバーを作ってみることにしました。これが
アイアンマックシリーズの始まりです。
ところが作り始めると、このデザインによる最大の特徴は、外観よりもむしろ放熱性能に優れたものが作りやすいという点だとわかりました。
装着されているプラスチックカバーは、シャーシとの間にホコリをためていても外から見えず、これが長期の使用で通風をかなり悪化させていたのです。
バラした多くのMDDやクイックシルバーを見ると、空気の通過するパンチングメタル部分は、下の写真のように「ホコリのジュータン」状態になっていることが多くありますが、一般の方々がここを掃除するのは、けっこうメンドウもしくは難しいでしょう。
ですから特に騒音と高熱に悩まされているMDDにとって、今回の改造は効果絶大といえます。中でも電源の騒音と温度上昇は、電源ユニットの寿命に関わるので、長期安定動作には重要です。
ところでMDDのシャーシをむき出しにして気付いたのは、電源ユニット設計とシャーシ設計において、打ち合わせの不手際がアップル社内にあったのではないかと思われる点です。まずは下の写真をご覧ください。
このように、せっかくシャーシに開けてある排気口を、この電源ユニットは下の写真のように、自らふさいでしまうという自虐的というか矛盾した構造になっています。
熱くなるのが分かっていたはずのMDDの電源に、なぜこのようなことを行ってしまったのでしょうか。今でこそ中古の電源が5000円程度で入手できるものの、10数年前の5万円近い交換修理代は、かなりキビシかったはずです。
そこで遅すぎましたがメーカーにとって代わり、電源ユニットケースの一部をカットして、シャーシの開口部を活かすことにしました。これによって排気経路が50%以上拡大し、より静かなファンの使用が可能となったわけです。
つまり通風環境をカイゼンせずに静かな(弱い)ファンを取り付けただけでは、騒音が下がった分、結果的に温度上昇による電源の短命化を招いてしまうのです。
僅かな空気抵抗も徹底的につぶす。内部配線を束ねる結束バンドも
見た目は良いが、電線による壁になり、流動抵抗を上げるので外してある。
電源用で今回抜群の静寂性を出したオウルテックのファン
ここまで来るのに何個ファンを買ったことか・・・
次にサイドファンからの空気の取り込み効率を上げるため、パンチングメタルではなく丸穴を空け、ファンガードを取り付けました。もちろんファン自体も静音性の高いものに交換します。
通常ここに溜まったホコリを取るには、まずマザーボードを外し、それからプラスチックカバーを外すという手間が必要になります。
更にCDドライブホルダーの下段は、一部大きく切り広げてCPUへの通風ダクトと位置付け、内部に新たなブロアも増設して、メインファンからの風がほとんど届かなかったヒートシンク上部(全体の3分の1に及ぶ)を効率よく冷やします。
こうしたヒートシンクに対する全面冷却体制によりにより、メインファンも静音タイプが使えるようになりました。また増設ブロアについては、12V規格のものを5Vで動作させ、充分な静音性を保っています。
仕上げとして電源の排気口及びCPU排気口に60mmのファンを設置しました。写真だとパンチングメタルの上からそのまま取り付けているように見えますが、実際はシャーシに直径60mmの穴をあけてあります。
ちなみにCPU用の増設ブロア同様、この60mmファンについても、定格12Vのものを5Vで回して低騒音化と高空冷化を実現していて、これらはもともとサイドファンだったものの有効活用です。
こうして過剰とも思える静音化、低温化が実現しましたが、今時この静かなマックで何をしようというのでしょうか。
OS10.4.11 のサファリはインターネットの蚊帳(かや)の外ですし、確かに
OS9でしか働かないアプリはあるものの、それだけではここまで苦労した甲斐が無いような気がしてなりません。
ところが、そうした私の考え方は、根本から間違っていたのです。
つづく
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