マックG4 アイアンシリーズ
           その3 チューブドマックの登場


熱的にも騒音的にも問題の無いクイックシルバーですが、何かアホなことをしないと面白みがありません。そこでオーディオアンプ部分を真空管にしようと思います。

これはロジックボードのアンプだけで音を出すという当初のお約束とは違いますが、真空管は私にとって別格なので仕方ないとして、どうせ使うのなら背が低く、いかにも真空管という、古典管の12ZP1としました。
  
       


6ZP1ではなく12Zとしたのは、パソコンの電源から12Vが出ているからです。これをあえて3極管接続にして使おうと思います。

早速12ZP1の3極管接続特性を計測すると、シングルで0,5W出せるとわかりました。これを2本パラレルにして1Wのアンプを構成します。


                  


回路図は下のようになります。入力トランスはラジオデパートの3Fで売っていた10kΩ対8Ωというもので、周波数特性を調べると充分なレンジを持つことがわかり、35倍というゲインも丁度良い値です。

メーカーは不詳で、サンスイのカタログにもこの規格は見当たりませんでした。


                   


入力トランスとしたのは、アンプの入力回路まで真空管で構成すると、ロジックボードのサポートという意味から離れ過ぎるのに加え、もしロジックボードのスピーカー出力がBTL(※)だったら、トランスでフロートしないと、コールド側がショートされる可能性があるからです。


      


ところで真空管回路に必要な250Vの電圧は、当初12Vイン90VアウトのDCーDCコンバーターを予定していました。これを3倍電圧回路で昇圧すれば何とかなるだろうと思ったのです。


                   


            


しかし実際に組み込んで動作させてみると、300V近い高圧パルスにより、肝心なパソコン側の動作不安定が起きてしまいました。ただしその後の検証では、パルスの影響というより、電源容量の定格オーバーの可能性の方が大きいようです。


              


そのため、例えばグラフィックカードを64MのDVIにすると、メモリを1枚抜かなくてはならず、これを解決するには真空管のヒーターを別電源にしたり、HDDをSSDにするといった対策があります。

こんなに古いマックですが、メーカーにとって全く対象外でありながら、クイックシルバーにはSSDに対応できる柔軟性があって、SATAのSSDを相性の良いIDEアダプター経由で使うと、起動ディスクにもなります。


           


さらに倍電圧に使った汎用ケミコンは、タンジェントデルタ(tanδ:静電容量と内部電極直流抵抗の比率)が大きく、激しいパルスによるリップル電流のせいで熱が出でしまいました。これでは危なくて使えません。


        


やはりスイッチング電源の2重連動や倍電圧は甘くなく、ちゃんとしたコンデンサーと、しっかりしたシールドが必要なようで、それにはそれなりのスペース確保が必要となります。

そこでスイッチング電源はあきらめ、100V-230Vのトランスによる電源を導入することにしました。ただしパソコン本体には100Vを制御する電源スイッチが無いので、トランスの100Vオンオフは、マックの電源ユニットからもらう12Vでリレーを働かせ制御します。


         


こうして出来たのが、おそらくマック史上初のパソコンと、ブラウン管以外の真空管とのコラボ「チューブドアイアンマック・クイックシルバーモデルであります。


            


            


スティーブ(ジョブズ)も天国で複雑な表情をしていることでしょう。このあとはいよいよ音楽、特にラジオを聴くため、アプリケーションのインストールに移ります。



※BTL:通常のアンプはコールド(マイナス)側は共通のグランドアースだが、BTLアンプではコールド側もマイナス(逆)の位相を持ったアンプとなっているので、入力端子のコールド側がアースとなっているアンプとは接続できない。


           



つづく






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