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 では続行します。         

 

 さらに細かく表示するなら0,5デシベルという値も使えます。

 

 0,5デシベル は 0,05ベル=1/20ベル つまり 10の20乗根 で、調べてみると
 

               「1,122」 となり、
 

 この数値を20回かけ合わせると約10となります。
 
 これもパネルにしました。かえって分かりにくいでしょうか?

 
 

 

 
 

 表も作りました。

 

デシベル 8dB 0,5dB
乗 数 100,8 100,05
倍 率 6,313 1,122

 

 上の表にある 8dB の 6,313倍 に 0,5dB の 1,122倍 を電卓で掛け算すると
 

     7,083倍 になります。そこで   

 

 
7,083=6,313×1,122=100,8×100,05
                  =100,8+0,05
                  =100,85
                  =8,5dB 

 

 

 つまり 7 という数字は、ほぼ 10の0,85乗 でもあるわけです。

 

 また、0,5dB は 約1,1倍 を表す、何かとベンリな値です。
 

 消費税が10パーセントになったら、「消費税はプラス0,5デシベルか・・・。」
 などと誰もがつぶやく事でしょう・・・。

 
 

 それはともかく、25倍 の増幅器と、35倍 の増幅器があり、
 その中間に 1/4倍 に減衰する回路がはさまっている場合、

 トータルで何倍になるのかについて計算してみましょう。

 
          
 
 ただし、

 

 
    −10dB=−1B=10−1 
               =1/10
               =1/10       と同様に、

 

     −6dB=−0,6B=10−0,6
                 =1/100,6
                 =1/3,982

                 ≒1/4      となります。
 

 

 25倍 は 5×5倍 で、これをデシベルで見ると 7dB+7dB=14dB
 

 35倍 は 5×7倍 で、これをデシベルで見ると 7dB+8,5dB=15,5dB
 

 4分の1 は 4倍 である 6dB の逆数 つまり ー6dB
 
この様子をパネルにしました。

 

 
 

 これを倍数つまり掛け算で計算すると、ちょっと厄介ですが、
 dB表示では乗数の計算、つまり足し算と引き算になるので

 

    14−6+15,5=23,5 と暗算でも出来てしまいます。

 

 そして出てきた 23,5dB を、今度は分かっているデシベルに分割します。すると 

 

 
20dB+3,5dB=20dB+3dB+0,5dB

≒100倍×2倍×1,1倍
          =220倍 

 

 

 と、おおよその倍率が簡単にだせますし、もっと複雑な回路ではさらに力を発揮します。

 
 「でも、そんなの電卓で倍率だけ計算すりゃいいじゃん!」という人、

 ・・・・電卓で計算してください。

 

     25÷4×35=218,75倍

 

 ただ、この手法が発明されたのは、電卓はおろかカシオ計算機という会社も、いやそれどころか、
 その創設者である樫尾社長(1929〜)すら生まれていない、
明治から大正時代だという事を、忘れないでください。

 
 

 
このようにデシベル表示とは、
 
@実際の倍数を、一度「10の何乗か?」という別の世界に引きずり込み、

 

Aそこで掛け算や割り算を、乗数の足し算や引き算に置き換えることで、単純化してしまおうという、手法なのです。
 

 

 

 あとはdBと倍数の関係を覚えるだけですが、これは「慣れ」しかありません。
 

 下の表はプラス側しか書いてありませんが、デシベルにマイナス記号がつけば

 「何倍」という部分が「何分の1」と変わるだけです。

 

=の回数 0回 1回 2回 3回 4回 5回 6回 7回 8回 9回
デシベル 1dB 2dB 3dB 4dB 5dB 6dB 7dB 8db 9db 10db
乗 数 100,1 100,2 100,3 100,4 100,5 100,6 100,7 100,8 100,9 101,0
倍 率 1,259 1,585 1,996 2,512 3,163 3,982 5,014 6,313 7,948 10,006
概 数 1,6倍 2倍 2,5倍 3倍強 4倍 5倍 6,3倍 8倍 10倍

 

 と、ここまで来て肝心なことを忘れていました。0デシベルは1倍ですが、0倍はどう表すのでしょうか。

 

 それはこの分数が教えてくれます。

 

      1/無限大=0  これを「10の何乗か?」で表すと
 
       1/10
=10
 

 そこでマイナス無限大ベル=マイナス無限大デシベルが0倍になるわけです。

 

デシベル 0dB −∞db
倍 率

 

 今回のレポートで、デシベルの概念がつかめて頂けたでしょうか。

 

  
追記)0,5デシベル=0,05ベルの算出方法にはこのような方法もあります。

下の式を見てください

 

1dB=100,1=100、05+0,05

 100,05×100,05
           =(100,05
              
=(0,5dB)

 

つまり1デシベルとは,5デシベルの2乗になるので、逆に1,259のルートを出せば計算できます。

 

ルート付きの電卓で「1,259」と打ち込み、√記号を押せば「1,12205」と出るでしょう。0,5デシベルは、約1割アップを示すベンリな値です。
 

 

デシベル 0,5dB
倍 率 1,122
概 数 1,1倍


 
 

    by ヤナギダ カツミ

 
 
あとがき
 

 ここまでで、デシベルの概念的なお話は終わりですが、実はこれまで述べてきたのは、全て電力の倍率なのです。
 この先は電圧の倍率についての話になるので、
興味のある人はお読みください。

 
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 例えば10オームの抵抗器に10ボルトの電圧がかかると、

 
 

 
 

 10ボルト÷10オーム=1アンペア の電流が流れます。この時の電力は

 10ボルト×1アンペア=10ワット しかし電圧が2倍になると

 

 20ボルト÷10オーム=2アンペア の電流が流れ、この時の電力は

 20ボルト×2アンペア=40ワット このように4倍になっています。

 
 

 

 4倍とは6デシベル。電力では、確か2倍は3デシベルでした。

 

 このように、電圧を数倍にすると電流まで同数倍になるため、電圧の倍率をデシベルで表現する時は、
 例えば電圧が2倍なら電力は4倍、電圧が3倍なら電力は9倍というように、 結果的に起こる電力の倍率 で表現します。

 

 
 

 そこで電圧のデシベル表示では、電力のデシベル表示の2倍にします。

 

 例えば、デシベルで電力の 4倍 をあらわすと 6デシベル=100,6ですが

 電圧が4倍になると電流も 4倍 になるので、結果的には 16倍 を意味します。
 
 そこで最初から 結果的に起こる電力の倍率  つまり 16倍 である 12dB を
 電圧における 4倍 とすることにしておけばよいのです。

 

 
 100,6×100,6100,6+0,6

   =101,2

   =12dB
          =16倍 

 

 

 このように 結果的に起こる電力の倍率 で示すなら 「電圧表示では、電力の時の2倍デシベル」にしなければならないのです。

 

 
   電力が20デシベ(=100倍)上がったのは、

電圧が10倍になったからだな。

 

  電力が6デシベル(=4倍)上がったのは、

電圧が2倍になったからだな。
 

 

 と予測することが必要なわけです。

 
 (電圧の倍数 対 デシベル表)

デシベル 1dB 2dB 3dB 4dB 5dB 6dB 7dB 8dB 9dB 10dB 12db 14dB 16dB 18dB 20dB
倍 率 1,122 1,259 1,412 1,585 1,900 1,990 2,239 2,513 2,819 3,163 3,982 5,014 6,313 7,948 10,006
概 数 1,1倍 1,26倍 1,4倍 1,6倍 1,9倍 2倍 2,24倍 2,5倍 2,8倍 3,2倍 4倍 5倍 6,3倍 8倍 10倍

 
 ただし先ほどの電力の計算式では、抵抗が一定の値、つまり10オームとしていました。

 
 

 
 

 ところが最近の回路では、この値がばらばらなので、電圧が2倍になったとしても、電力が4倍になっているとは限りません。

 

 下の図は2倍になった後の抵抗値が40Ωになった場合で、電圧が2倍でも電流が2分の1になったため、
 結局電力は変わっていません。

 
 



 
 

 そこで「結果として起こる電力の倍率」という部分は目をつむり、単なる倍率を表す表記方として、
 すべて電力の時の2倍デシベルで考えるようになっています。

 

 ですから電圧では 1デシベル が 約1割アップ を意味します。
 念のため、もう一度(電圧の倍数 対 デシベル表)を下に記載しておきます。

 
 

デシベル 1dB 2dB 3dB 4dB 5dB 6dB 7dB 8dB 9dB 10dB 12db 14dB 16dB 18dB 20dB
倍 率 1,122 1,259 1,412 1,585 1,900 1,990 2,239 2,513 2,819 3,163 3,982 5,014 6,313 7,948 10,006
概 数 1,1倍 1,26倍 1,4倍 1,6倍 1,9倍 2倍 2,24倍 2,5倍 2,8倍 3,2倍 4倍 5倍 6,3倍 8倍 10倍

 
 

 最後にデシベル表示の効用について考えて見ましょう。

 

 例えば100まで均等に目盛りがあり、ツマミの位置がそのままアンプの出力だとすると、

 100の出力を半分にするためには、ツマミを50に合わすことになります。

 

 ところが出力が半分になっても、耳で聴いた感じでは「ちょっと音量が下がったな。」という程度でしかありません。
 しかし、これが人間の耳の特性なのです。

 

 

 

 さらに半分の25にしても、「まあ、一応は小さくなったな。」という程度ですが、
 すでに
ここまでで目盛りの角度の大半を使っています。

 

 これでは静かに音楽を聴きたい時、残るわずかな角度の調整で、音量が大きく変わるという、
 とても使いづらいボリウムになってしまいます。

 

 このようなボリウムは、通常Bカーブのボリウムといいます。

 変化をグラフにすると直線になるので直線型ボリウムとも言います。

 

 一方デシベルで均等に目盛られていると、100倍である20デシベルの半分とはマイナス3デシベルで、
 ツマミの位置は、17のあたりです。

 

 この時の「ツマミをちょっと下げた。」という感覚と「音量がちょっと下がった。」という感覚はとても近いのです。

 
 

 

 
 

 さらにツマミを半分つまり10デシベルの位置まで下げると、出力は10分の1になります

 が、耳の感覚では「音量が半分になった。」という感覚に近いのです。

 

 このようなボリウムは、通常Aカーブのボリウムといいます。

 変化のグラフは対数カーブを描くので対数型ボリウムとも言います。

 

 ただしイラストのボリウムは分かりやすくするため、非現実的な電力調整用のボリウムとしましたが、
 一方現実のボリウムは電圧調整を行ないます。

 

 そこで、結果として起こる電力の変化は2乗倍となるため、もう少し感覚が異なります。
 

 また実際のツマミの表示は、上右のイラストと同じです。
 
 

  

 
 

 このようにデシベル表示というのは、より人間的な大小感覚に近いので、

 今日でも盛んに使用されているわけです。
 
 
 

 

あとがき