GM-70 Single Ended
まずは電源回路ですが、ケミコンが山のように溢れています。しかしながら構成自体はじつにシンプルで、GM70のフィラメントは安く放出されたパソコン用のSW電源を用いています。





このSW電源は19Vのため若干プレート特性に変化があるかもしれません。そこで改めて曲線を計測しなおして見ました。


            


増幅回路もそれに負けず極めてシンプルです。6HV5Aの第2グリッドのように見えるのが、この球特有のビームプレートとなり、第1グリッドはフレームグリッドという極めて細密かつ丈夫な構造により、カソードまでの距離を極限まで接近させることでgmとμを高めています。

6HV5-Aのよさは、1KVを越す高圧の出力管を扱う時、ドライバー用に中低圧電源が不要な点、及び初段管としてヒーターの直流点火が不要な点で、テレビ用高圧電源回路のお仕事が終わった今、いかにもこの様な用途ために、オーディオ界に登場してきた球という感じがします。





ところで、6HV5や6HS5など、レギュレーター用高圧ビーム3極管は外見が水平出力管に似ており、811Aの様にμが高くプレート損失が大きく、さらにプレートキャップが無い事から、これでパワーアンプを作ろうとする人もいるのではないかと思います。

ところが大きな電流を流そうとすると、G1の動作領域はポジティブグリッド側になってしまい、繊細なフレームグリッドをパワーグリッド扱いしたことが原因で、短い寿命に終わるでしょう。それでなくともG1はカソードからの輻射熱に耐えているのです。

多くの人はG2の損失や耐圧には敏感な反面、なぜかG1の損失にはそれほど気をとめないのは、大出力というニンジンを目の前にすると、判断がつきにくくなるからでしょう。

しかしそのような欲は抑えてください。この球の大きなプレート損失は4000V×8mA(平均値)=32Wといったコンディションを想定しているのです。

これを例えて言うなら、花や生き物を育ててたりすることが大好きな男の子に、「おまえは体がデカイから格闘技をやれ!」と強引にせまる親のようなものです。そんな目でこの球の人権を考えてあげてください。





それでは製作にかかりましょう。今回のオーダーは設置場所の関係で縦長のシャーシレイアウトとなります。またソケットは、この球を出品していたショップで比較的安く入手できましたが(¥1500)、例によって10cmファンと一体化させるため、コーナーをダイアモンドカッターで切断し通風部分を作ります。


       


下がシャーシ裏側部分です。回路自体は部品数が少ないのですが、ケミコンとファンの収納でだいぶスペースを使います。中央左にある黒い物がSW電源で、シャーシの補強用L型アングルに取り付けてあります。


   


右下の黄色いトランスが、SELのOPT:L−195で、電源トランスを縦型にして設置するため、今回は伏せ型にして使います。


つづく





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