GM-70 Single Ended
とごろが電源を入れてみると耳をつんざくようなスパーク音がするではありませんか。ヒューズは飛びダイオードも破壊されています。そしてこれは電源投入後電圧が1500V近くになった時起こる事がわかりました。

そこでいろいろ調べてゆくうちに、原因はチョークコイルの耐圧オーバーだと分かったため、コイル本体をシャーシから浮かせて取り付けることにしました。

この現象は2台共に起こりましたので、東栄のチョークコイルを1200〜1300V以上で使う時は、シャーシに直付けしないほうが良いでしょう。ただしチョーク自体が帯電するので、周りを囲いました。


      


ということでおおよその完成形は下の写真のようになりました。相変わらずハードウエアのてんこ盛りといった不愛想なデザインですが、温度やノイズなど性能を優先したためこうなります。

GM−70の表面温度は管中央部分で160℃、チムニーからはずれる上端で220℃くらいになり、その時のアクリルチムニーは40℃前後と言う事で、なんとか実用範囲に収まっています。

尚、今後は様子を見てもう少し球の上部まで気流がフォロー出来るよう、チムニーのエクステンション部分も作る予定です。これは最初から長いチムニーにすると球の取り外しが大変だからです。


    


6HV5(今回は6HS5を使用)には、今回「簡易上昇気流発生器」別名パッシブクーラーを4方向から取り付け、球の表面温度は75℃とかなり低めです。ただしパッシブクーラーの数値的な効果はまだ実証していません。

6HS5を用いたのは、ほとんど、と言うか全く6HV5(1500円)と特性が同じなのに、名前が売れていないため、クラッシックコンポーネンツでは値段を下げて売っていた(1000円)からです。


      


ファンは10Vで回していて、非常に静かです。電源を切るとバッテリーによるバックアップ冷却となり、ファン電圧が7Vまで下がるため一瞬温度の上昇が見られるものの、すぐに低下して強制空冷の必要性を感じます。

ちなみにネットで見てみると、GM−70シングルアンプの強制空冷を用いた製作例はほとんど無い上に、ステレオ仕様で作ってしまっている市販品などさえあり、まさにケミコンの熱中症被害が予想できます。

今回は私のアンプでは定番のケミコンマウンテンに、輻射熱から守るためのバリケードもつけました。このくらい離れていても、遠赤外線はかなり飛んでくるのです。


       


そういえば6C33C−BのOTLアンプでファン無しといった場合の発熱は、いったいどうしているのでしょうか。これによるDCアンプの記事で、「本機は通風の良い状態で使う必要がある・・・・」などと人事で済ましているのには首を傾げますが、ともかく特性の測定に移りましょう。

10Wで0,25%30Wでも0,68%となり予定最大出力35Wでも2,2%、さらに40Wで3%となりました。ダンピングファクターは4ちょうどで、予定より少し低めです。

プレート電圧が低めで負荷抵抗を下げた動作、つまり浅野氏の言う所の「電流をタップリ流した豊かな音」は、ダンピングファクターの低下による低域の持ち上がりを言っているような気がします。

例えば私の好きな古いフルレンジスピーカーなどは、それもまた良しと思いますが、当面は真空管のポテンシャルを最大限に引き出し、その人権を確保する事が目標です。


     


こうしたアンプを作るたび、先人は真空管という凄い物を作ったのだなと感心します。また4CX250Kの時も感じましたが、L−195のように大きなOPTを使用したアンプは、低域においてコアが磁気飽和しにくいため、同じ出力で聴いていても迫力が違います。

信号がトランスを通過するということは、信号つまり電力によって磁力に変換されたコアが、元の状態に戻ろうとして磁力を電力として吐き出す作業ですから、コアはメカニカルな伝送線路そのものです。

ですからどんな良い材料を使っていても、細くてすぐ詰まる下水道のようでは駄目であり、どうしても大型のトランスが必要となるわけです。

また何度も言うようですがこれは私のようなアンプの製作者がスゴイのではなく、まさに真空管を作った人たちがスゴイのです。わずか2個の能動素子だけで、しかもNFBを全く使わずに、ここまでのアンプが出来てしまうというのは実に爽快ですね。

カットオフ周波数は高域で18kHz、低域で18Hzとなりました。


    


残留ノイズは最初2,2mVと出て、出力波形を見ると僅かにSW電源の高周波が乗っています。そこで電源の出力に4700μFをつけると1.8mVまで下がりましたが、まだハムのような波形が残っていて、これはどうやらドライバーで発生しているようです。。

そこで6HS5をダイオードとコンデンサによる、フィルター無しの簡単な直流点火としたところ、目標値1mV未満をクリアして0,8mVとなったため、もはやシャーシ内にスペースも無く、やむなくこれで良しとしました。


     


ヒヤリングテストでは解像度の高さとトランジェント感が引立ちました。動作曲線がリニアなので混変調歪が少ないのに加え、適度なDFとハイパワーによる立ち上がりの良さがもろに効いているようです。

スピーカーはナショナルのゲンコツを使った2ウエイで、許容入力は6Wですが、クラッシックなど信じられないくらいスケールのある音もクリアに出せます。やはりデカイOPTはイイ!

私達は澄んだ音というとつい高い方、つまり高音に目が向いてしまい、超音波まで聴こうとしますが、実は混変調歪や飽和のない優れた低音こそが決め手なのだとわかります。

スカイツリーの高さ、展望台、頭頂部のゲイン塔などをマスコミは騒ぎ立てますが、実は誰も話題にすらしない、極めて優れた基礎工事があってこその快挙だと言うのに似ています。

その後オーナー様よりフロントパネルを真鍮プレートに変更したいとの依頼ががあり、電流計をつけてリメイクしました。


    







その3
冷却状況とチョークコイルの耐圧及び諸特性
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