まず出来上がったソケットを使って特性カーブを計測し、大まかな動作点を探ります。これによるとグリッドをプラス10Vくらいまで振れば22W程度まで出せるとわかりました。ただし残念ながらグリッド電流は2C39と変わりなく、5Vで50mA,10Vでは100mA以上にも及びます。
その際、動作条件はプレート電圧Ep=1200V、プレート電流80mAとなるので、プレートには96Wほど入力されるとわかります。またヒーターのみ点灯して数時間放置すると、それだけで全体の温度が40℃くらいまで上昇しました。
次にバラックセットで電源を組んで、実際にプレート電流を流した状態の温度を測定しました。電源はAC1200Vを整流後、4H200mAのチョークコイルによるフィルターを通すだけの簡単な回路で、電圧はトランス1次側をスライダックトランスにより変化させます。
最初はEp=1300V、Ip=80mA、つまりプレート入力104Wからはじめます。ただしヒートシンクの熱容量が大きく、温度の安定にはとても時間がかかるため、時々温度を見ながら1時間半ほど待ちました。
また計測場所はヒートシンク部分ではなく、ピンク色のセラミック部分、及びグリッド部分です。強制空冷と一番違うところは、自然空冷では真空管の内部と表面の温度差が少なく、より中心部温度をリアルに再現している点でしょう。
こうして計測した数値が下の表です。受信管のガラス表面温度が200℃程度なのに対し、この温度は内部温度に近い値と考えられますから、1200V、80mA、98W入力という今回の設計値は安全圏内といえます。
入力電力 W |
Ep V |
Ip mA |
プレート温度 ℃ |
グリッド温度 ℃ |
104 |
1300 |
80 |
164 |
120 |
93 |
1250 |
75 |
154 |
97 |
84 |
1200 |
70 |
149 |
89 |
これでGS-90Bの自然空冷動作を可能にするシステムが出来たとわかりました。次の問題は100mAにも及ぶグリッド電流をどうドライブするかにありそうです。
今回も6S19Pによるダイナミックカップルドグランデッドグリッド「DCGG」で構成するので特性カーブをみると、プレ−ト電圧70Vにおいて145mA流れるとわかりました。これを2本パラレルにすれば290mAとなります。
290mA流れた時5Vという電圧が発生するには17Ωで400mAくらい流せるチョークコイルが必要です。そこで東栄変成器のサイトを見ると、なんんと2C39の時に続いてまたびっくり、ちょうどピッタリの物があるではないですか。
実際はこれにGS-90Bの80mAが加わるため6,6Vとなりますが、バイアスやプレート電圧の調節でなんとかなるでしょう。こうして回路図は下のようになりました。
2C39と似ていますが、GS−90Bの電流特性がグリッド電圧−5Vを中心としてS字型に点対称となっているので、位相反転回路は設けませんでした。
DCGG(ダイナミックカップルド・グランデッドグリッド)は、まだなじみが薄く、あるいは奇をてらった回路のようにも見えます。しかしドライブ電圧が低く、入力インピーダンスの変動が激しいハイμ管のA1−2級ドライブにおいて、むしろ正統派なのではないでしょうか。
ところでこれだけ大げさなルックスで20W少々では淋しい気がします。よってもう少しハイパワーを目指すべく考えた末、またずるい方法が浮かびました。
つづく
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