真空管のリニアアンプは、球の内部抵抗が数kから数10kΩ程度と高いため、そのままではアンテナの持つ50Ωや75Ωという低インピーダンスとマッチングがとれません。そこでオーディオ同様高周波の出力トランス(マッチングトランス)が必要です。

その後(第2次世界大戦以降)この部分はπマッチ回路というものが一般的になり、これが出力トランスと同等に使用されるようになりました。

しかし回路図を見ると単なるコイルとコンデンサによるフィルターにしか見えず、まるで電源回路です。なぜこのようなものがマッチングトランスと同じ働きをするのでしょうか。またオーディオへの転用はできるのでしょうか。


             


動作原理を本やネット上で調べてみても、肝心の部分に対しては「Lマッチを組み合わせたもの。」といった説明で終わらせています。

ところがその基本原理であろうLマッチについての説明はなく、結局原理の解説には程遠いものばかりです。後は教科書や参考書に記載されている数式群を若干アレンジして、ずらっと並べておしまい。

・・・これではいつまで経っても理解できません。そこで私のどんよりした頭でも理解できる可能性を求め、この回路を少し変形してみました。


  


さらにリニアアンプの回路図を見ると、通常C2の静電容量はC1に比べ相当大きい値になっています。例えばHF帯ではC1が100pF程度であるのに対しC2は1000pF前後なのです。

ということからC1が十分な容量性交流抵抗(容量リアクタンス:XC)を持つ周波数では、C2はほぼ無視できると考えると、この回路は単純なLC並列共振回路として見ることができます。


              


ちなみに、このときコンデンサに流れる電流とコイルに流れる電流「I」は上下逆方向なので、例えばコイルに電流が流れ込むと、コンデンサーが同じ量の電流を押し返してくるわけです。


            
            赤の線と青の線の和はいつもゼロになり、電流が流れていないように見える


つまり周波数に合わせて右回りになったり左回りになったり、コイルとコンデンサーの間だけで電流のやりとりが行われ、外部から流れ込む電流を受け付けないように見えるめ、A点から見た共振回路のインピーダンスは無限大と同じになります。

これはちょうど男女が超ラブラブ状態になると、周囲の言葉や視線を受け付けなくなるのに似ていて、電気回路が俗世間の恋愛事情と同じである事に驚かされます。

もっとも「思考」という概念(脳機能)自体、地球46億年に及ぶ宇宙の法則による産物と考えれば、このような現象は当然のことかもしれません。


  


共振回路としてはこの様な状況なのですが、ここでLとグランドとの間に容量の大きなC2があるとどうなるのでしょう。

ところがこれをを安易に電気回路の電流、電圧、インピーダンスで説明すると、たちまち数式の嵐が吹き荒れ、遭難者が続出してしまいます。

おまけにそれは動作原理の説明ではなく、定数の決定方法を語るコピー知識に過ぎません。

そこで物理学的に、電荷という視点から考えます。電流というのは1秒間にどれだけの電荷が流れるかを示す値なので、同じ電流でも大きな容量のコンデンサーには低い電圧となって電荷が貯まります。


         


上の図にある「Q」はクーロンと言う電荷(電気のつぶつぶ)の量を表わし、同量の電荷ならば、静電容量「C」の違いによる両端電圧は、下図に示す水位のように変化します。

ただし電荷はElectric Chargeなので「E C」、クーロンの単位は本来Coulombの「C」で表わしますが、コンデンサーや電圧と紛らわしくなるため、電気の量を量子化したQuantizationという単語から、「Q」と勝手に書いています。


              


このような状態は直列のバッテリーを並列にしたようなものなので、低いインピーダンスの負荷をつないでも、そこに貯まった電荷で大きなチャージ電流を一気に流せます。つまり電圧は低くなるが大電流に対応できるように変換出来たと言う訳です。


               


別の言い方をすれば、出力における低インピーダンス大電流は、Lから直接もらっているのではなく、Lから一度C2にチャージされた低電圧の電荷をC2から送り出していると言うことになります。


            


この方式のスゴイ所は出力側のインピーダンスマッチングがバリコンによってスムーズに行える点で、コイルに細かくタップを出すような電磁誘導タイプの複雑構造と同じ働きを、実に安易に、しかも無接点、故に無接触そして無段階で行なえます。


  


実際これほど素晴らしい方式であるにもかかわらず、これを広めた人の偉業がどこにも語られていないのが不思議なほどです。

また共振周波数を主に決定しているのはリアクタンスの大きい(静電容量の小さい)C1で、C2は主に出力インピーダンスを決定していることになります。





さらにπマッチ回路を細かく見ると、2個の直列コンデンサとLによる共振回路であると同時に、共通の電流「I」をC1とC2がそれぞれ別の形で受け止める、コンデンサによる変換回路といえることもわかります。

抵抗器による分圧との相違は、抵抗器が単純に電力を分割しているのに対し、コンデンサーの分圧は、電圧を分割しているのではなく、各々が充電と放電を繰り返している時の電荷を持つスタイルが違うだけなので、そこにある電荷、つまり電力が等しいと言う点です。

そしてこの電荷スタイル変換こそがインピーダンス変換なのです。





通常のトランスが電磁誘導トランスなら、これは電荷貯蔵トランスというところでしょうか。実用上の違いはオートトランス同様1次側と2次側の絶縁ができない、熱に弱く商用50Hz電源では大型で高価になる、などがありそうです。

もちろんC2に共振周波数の低電圧を入力すれば、共振回路には共通の電流「I」、すなわち単位時間あたり同じ電荷が流れるわけですから、C1にはその電荷に見合ったC2より高い電圧が発生します。


       


ということで、オーディオにおいてπマッチ回路を出力トランスとして使うには、C1とLの特定共振周波数でしか通用せず、モールス信号を聞く時か、フルマルチ音源による電子オルガンを作る時くらいしか用途がないとわかりました。


    


上の図で(Q=5)とありますが、LやCの値を決める時「Q」という値がものを言い、共振の鋭さを決定します。基準はQ=1の時で、共振周波数における信号源のインピーダンスと、L,Cのリアクタンスが同じ時です。

またこのQは電荷で使った便宜上のQとは別物です。


        


このとき山はなだらかで、グラフを上下反転すると、ちょうどスピーカーのLCネットワークを設計する時がこれに当たると思います。


  


一方高周波リニアアンプではQ=10くらいが、増幅効率や高調波の抑圧から実用的な値となるそうです。


        


このとき山は適度なするどさを持ちます。ただしグラフの図はいずれも正確な形態ではなく、概念的な形を示しています。

ですからトランジスタでも真空管でも、入力や出力の静電容量が大きいとXCの値を勝手に上げる事ができず、それが共振回路におけるQの限界を決めてしまうことになります。

これもグラフを上下反転すると、スピーカーネットワークで、ウーハーの倍音によるピークをつぶしたい時などに行う設計方法が相当すると考えられます。



  


今回のレポートで、πマッチング回路によりインピーダンス変換ができることを説明する文章が、ほとんど存在しない理由が判ったような気がします。

それは、なぜトランスがインピーダンス変換できるのかという事以上に、静電容量による電荷スタイル変換が、電気回路論の守備範囲から外れているためではないでしょうか。

しかもトランスやコイルはファラデーからマックスウェルに至る電磁気学があるものの、コンデンサーには静電気学といった確立したものがなく、物理学や自然科学に吸収されているように見えます。

私は電磁気学を男性的、静電気学を女性的(男女LC理論)と捉えていて、家事労働などをあまり高く評価しない人間社会の歴史的背景に、静電気学が当てはまるような気がしてなりません。



※この図形には若干ウソがあります。というのも横軸の時間ゼロの時点でまだ電圧が発生していないのにコンデンサーにはプラスの、コイルにはマイナスの電流が描いてあるからで、実際のスタート地点付近は下の図のようになります。


          

          


初動部分の電流変化だけを見ると、エネルギーの取り込み方では、コイルはゆっくりと、コンデンサーは素早く反応しているように見えます。

すなわち男女LC理論において、女性はさっさと環境の変化を受け入れるのに対し、男性はグダグダ遅くなり勝ちだと言うことがわかり、このような現象は
特に高齢者介護施設で顕著に現れています。

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Lマッチ回路の仕組み

オリジナルソング




新たな手法でπマッチング回路を解説!