スイッチング電源による SEPPアンプ
いろいろ考えた末、このような回路が出てきました。初段と2段目で、必要とされるドライブ電圧35Vに対し、150Vまでスイングできる能力があります。

また、位相反転にフッターマン思わせる、P-K分割回路を用いました。プレート側、カソード側それぞれ125Vまでスイングできます。

P-K分割方式がやや不評な背景には、電気的特性云々よりも、その幾何学的部分に問題があると思っています。つまりこの回路は、対照的な形をしていません。

電気関係のエンジニアは、同時にアーティスト的な美学を配線図に求めます。その理想のひとつにシンメトリー、つまり対象性があり、P-K分割は明らかにそれに違反しているのです。





しかし個人的には、SEPPの上下不対象性と、P-K分割の上下不対象性は、真空管回路が遭遇した面白い組み合わせだと思っています。

フッターマンとやや違うのは、PFBrと書いた10KΩのVRで、プラス側のK−K結合のPFB調整、一方NFBrと書いた50KΩのVRで、マイナス側のP−G帰還調整と、別々に行います。

出力側についている3Ωは、各PPペアごとのアイソレート用で、抵抗値が大きいほど、出力ミキシング時の、ストレス解消用抵抗として有効ですが、出力のロスも増えます。

マッチングトランスはオークションで入手した手作り品で、カットコアに巻いてあります。こうして出来たアンプの測定結果を出しておきました。またDF=1,1,残留雑音=2,2mVでした。


     

波形を見ながら調整した結果、最大出力は予想を下回り40W、3%の実用範囲は35Wと言ったところで、ヒーター電圧が若干少ない為かもしれません。しかし発熱を考えると「もうこれでいいや。」という感じです。


      


現在の問題点は、電源のスタートと放熱とスイッチングノイズで、電源とアンプ部を切り離すことにしましたが、電磁波状態のノイズには、あまり効果はありません。耳には聞こえませんが、今後ノイズフィルターなどで対処実験する予定です。

スタートの問題も深刻で、直列になった電源2次側の発生電圧によるショックのため、プロテクトがかかり、6台ある電源の幾つかがスタートしないことがあるのです。

そこで電源をONにした後、一旦OFFにして、電圧を2次側に均等に分配させ、もう一度ONにするという、エンジンのイグニッションキーにも似た操作をします。





さらにヒーター電源では、全真空管同時にONだと、こちらは電流でプロテクトがかかってしまいますので、電源ONでまず半分の球をONにさせ、すぐ後に残りの球を別のスイッチでONにします。

軽量化のためとはいえ、なんと不便な電源でしょう。

次回はP−K分割のドライブから、トランスドライブに変えてみます。
ドライバートランスはサンスイのA−101で、すでケース上に搭載されています。
やはり無帰還へのこだわりは捨てられません。

上の写真の時点では、中央付近に黒い円筒状に見えていますが、球から受ける輻射熱がすごいので、やむなくこの著名なトランスを銀色に塗り替えます。

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