GKアンプとGGアンプの相違点は入出力が同相である、入力インピーダンスが低いなどの他に、2次歪みの出方が逆になるという点がありました。
つまりGKアンプでは入力電圧のプラス側が効率よく増幅されるのに対し、マイナス側は特性カーブの間隔が狭まり、増幅度が低下します。(下の図左)
一方GGアンプでは入力がプラスに振れるとカソード電圧が上昇するため、グリッドがマイナスに振られたのと同等となり増幅度が低下してしまうのです。(同右)
一般に用いられるGKアンプの2段増幅では、歪の発生が1段目と2段目それぞれ上下反対に発生し、これが歪の打消しとなります。
私のアンプが比較的低歪なのは、GK-GK2段アンプによる歪み打ち消しの性質を、姑息に利用したからに他なりません。
実際の回路でも6AU6の500V・170倍動作や、6HV5Aの1200V・200倍動作など、単段ドライブによる2段構成にこだわったのはその為です。
しかしGK-GG2段アンプでは2段目でも同相に歪が発生するので、下の図のように打ち消しどころか歪増大の逆効果となってしまうわけです。
これではせっかく定インピーダンス入力を得たとしても、結局その意味は薄れ、むしろ通常のドライブのほうが低歪みとなる分マシになってしまいます。
これを解決するには初段の後に歪みの無い位相反転回路を配置する方法が考えられ、簡単なものとしてはP-K分割回路の反転側を使ったものが思い当たります。
実際に回路図にしてみると、あまりスマートな回路ではありませんが、現在これ以上のアイデアも無く、12AX7の両ユニットを有効に使えるという事もあり、そのまま計画を進めます。
余談ですが、これまでの歪発生構造を見て何か思い出しませんか?。そうです。実はイントラ反転はトランスの直流磁化を打ち消すことにより、ドライバーから発生する歪の打消しまでキャンセルしているので、歪率が下がらないのです。
それはさておき、こうして下のような回路図が出来上がりました。昨年秋に検討を始めてから、いつまで経ってもアンプの製作が始まらないので、そろそろこの辺で回路の変更はお仕舞いにしたいところです。
とはいえ単に「この真空管でも音が出ました。」といったアンプを作ってしまった場合、飽きっぽい私では1日くらいで音楽を聴く気にならなくなってしまうため、この程度の熟考期間は必要かもしれません。
つづく
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