その接続方法とは第1グリッドに抵抗をつないだ後、第2グリッドと結合して、これをコントロールグリッドとする、という方法で、RCAの送信管マニュアルにも回路例が出ています。

マニュアルでは抵抗の値が20kΩと、かなり高い値になっており、2A3のプッシュプル(10W)でドライブするようです。


       


第一グリッドにつなぐ抵抗の値はとても微妙で、あまり大きいとドライビングパワーが大きくなってしまいます。逆に小さいと感度は上がりますが、第一グリッドの損失が大きくなります。

今回は20V程度のドライブ電圧を想定して、特性曲線から1kΩという値に決めました。この動作例ではプレート電圧500V、グリッド電圧+19Vで8Wのシングルアンプが作れます。

また直線性もかなり良さそうです。問題は第1グリッドの損失がどうなるかという点ですが、とりあえずアンプを設計、製作してみることにします。





下がj実際の回路図です。ドライバーはお馴染みの7591で、807のプラスバイアスがそのまま7591のマイナスバイアスとなるため、ともに19Vになる動作点を見つけなければなりません。

チョークコイルの直流抵抗300Ωに19Vが発生するのは、7591のプレート電流が63mAの時で、この時のプレート電圧は、特性曲線より、275Vくらいになります。

これにカソード電圧が加わった供給電圧は295Vとなるわけです。





このときのドライバーのプレート損失は17,5Wほどですので、7591クラスでないと無理です。またグリッド直列抵抗は実験の結果、予定より低い値になり、その先に2KΩの抵抗がアースへとつながっています。

これは非直線的なグリッド電流による、直列抵抗の電流依存性を減らすためで、807の第1グリッドに発生する電圧歪を低減しています。

電源トランスは例によって140Vタップしかないインチキトランスなので、高圧用に3倍、中圧用に2倍電圧整流としました。





いよいよこのアンプの測定結果に入ります。1Wで2,3%とやや多目なのに、5Wでは1,6%と減って、設計最大出力8Wで3,2%となります。つまり1%と3%の間をウロウロしているわけです。

このように最大出力付近ではかなりイケてるものの、全般的には「ウーム・・・。」という感じです.。ただ音量による歪の変化が少ないのは、音楽を聴いていて面白いかもしれません。

というのも、小音量で倍音が多いと音量感が増しますが、音量が上がった時、むしろ倍音が減る場合は音量の上昇感が減ります。つまりコンプレッサー現象が起きると考えられるわけです。

通常のアンプのように出力と共に歪率も増える場合は、エキスパンダー現象、つまりダイナミックレンジが増えたような状態といえます。


     


  








ちなみに10Wでは6,4%で、このクラスの球としては「807よ、良くがんばったぞ!」と言いたい気持ちです。また、さらに改良の余地があるかもしれません。

波形を見ると、設計最大出力8W時まではなんとか持ちこたえていますが、10Wではクリップが始まっているのがわかります。

10KHzの矩形を見ると、微妙な振動が乗っているようです。

音質は811−3と明らかに違いますが、どちらが良いともいえません。ただ、「しばらくは本機を使っていたいなー。」という感じです。

次回は究極の正統派3極管接続です。




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807研究 その4 スペシャルコネクション編