下の写真に見えるのが、今回測定に使ったカーブトレーサー(下)と、自作した真空管用パラメーター変更アダプター(上)です。
もともと、このカーブトレーサーは、半導体ダイオードの、電圧−電流特性を見るためのものなので当然整流管のEp−Ip特性も測れます。
そこでどのような真空管でも測れるように、グリッド電圧をパラメーターとして変えてやれば、増幅回路に必要な動作特性曲線が現れるわけです。
ただし1度に観測できるのは1本の曲線だけなため、グリッド電圧を一定量変えながら、オシロスコープ用カメラで多重露出
(*)し、下のような写真を作ります。
(*)同じフィルムに何回もシャッターを切る事
スクリーングリッドの可変範囲は150〜300Vで、コントロールグリッドは−100〜+40Vとなっています。
活用方法に気付いた人が少なかったからか、誰もこんな事はやらないためか、
このカーブトレーサーはオークションでとても安く入手できた。キクスイ製
3結6L6GB(sovtec)の測定例。横軸100V/div,縦軸10mA/div。この場合グリッド電圧は5V間隔。
多極管特性も測れますが、本来はあまり発表されていない3極管接続の特性や、送信管の小電流低電圧領域を測りたくて、この様なものを作りました。
ソケットはMT7ピンから12ピンのマグノーバルまで、またヒーターは5V、6,3V、12,6Vに対応しています。
ただしST管のUXやUYなどはスペースの都合でGTソケットの部分にアダプターを挿して使います。
足の切り替えやプレートキャップの接続などは、頻繁に行わないので、バナナピンがベンリだ。
ST管アダプター。今のところUX,UY,UZ、UTがある。
撮影したフィルムはスキャナーで取り込み、白黒反転させ、数値を入れますが、パソコン上では好きにロードラインを引けるのでとても重宝です。
真空管の計測も含め、全てパソコン上で出来れば良いでしょうが、オーディオ信号などとは違い、1000Vを超えるプレート電圧や、ソケットの問題があるので、なかなか難しいところだと思います。
下の曲線はビーム接続の特性ですが、Ec1(赤い数字)0Vから−15V位まで曲線の間隔が等しく、意外と直線性が良いと分かります。
そこで出力はあまり出ない事を覚悟の上で、バイアス電圧−10Vを前提条件に、シングルアンプを設計してみます。
下の図の赤い実線がグリッドマイナス10Vでプレート損失が25W以下のロードラインになります。
ロードラインの傾きを計算すると、220Vで30mA変化してますから、
220÷30=7つまり負荷抵抗7KΩとなります。
最大出力はロードラインと青の点線と赤の点線で出来た3角形の面積ですから、
220×30÷2=3,3Wで、この時のプレート損失つまり消費電力は24Wです。
ずいぶん非効率な値とお思いでしょうが、大きなマグロからお刺身のサクを取るような
作業なので、こうなってしまいます。
以上をまとめると
Ep =260V Ip =90mA
Ec2=250V Ec1=−10V
RL =7kΩ Pout=3,3W
さあ、それでは次回、このセレブなアンプを実際に作ってみましょう。
その2へ続く
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