807研究から、KT88アンプが音質で不利な評価を得た原因は、どこにあるのか。
そこでまず、ウルトラリニア接続を疑ってみました。

ウルトラリニア接続は、3極管と5極管の中間とされ、出力低下がわずかで、内部抵抗も下がり、歪も減ってと、よい事ずくめですが、今ひとつ煮え切らないものがあります。

それは、5極管はダメで3極管は良い。だけど出力は欲しいから、中をとってウルトラリニア接続で何とかする、といった妥協的な雰囲気です。

しかし出力をあまり欲張らなければ、5極管でもなかなか良いという事が分かってきました。

そこで、左の配線図のように、単純な5極管接続に回路を変更して、特性を比較することにしました。
まず意外だったのが歪率特性で、なんとウルトラリニア接続より良い結果が出てしまいました。

しかもその上昇がとても素直なのです。これはおそらく出力回路の負帰還が減って高感度になり、ドライバーの負担が減ったためと思われます。

周波数特性を見ると、10Hzあたりで若干差が出ていますが、20kHz以上ではむしろ良くなっています。

音質は、ウルトラリニア接続より、明らかにスッキリしています。もしかしたら5極管は、安易にそこそこの出力が出せるが故に、誤解されてきたのかもしれません。
ただし音質の評価は、使用するスピーカーによっても異なるので、あくまで私の場合こうなった、と考えるべきでしょう。

そして、これがきっかけでスピーカーNS250の改造が始まりました。このアンプも3極管接続にしてみましたが、面白みはないので、これ以上の検討は中止とします。

次回は、KT88による3極管接続シングルアンプを考えます。


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KT88バラエティープロジェクト
その2