実験に使うのはHVTCの記念すべき第1号となったGK71HVTCシングルです。GK71は813のプレートを少し大きく(縦に長く)した球で、フィラメントは20Vです。

このアンプは当初12AX7と6CA7(T)によるパワードライブで作りましたが、プレート抵抗の発熱が大きく途中で6HV5に変更となりました。それが今回6BQ5で更にプレート抵抗の発熱を下げようと言うわけです。

幸い整流管用の5Vタップが空いていたので、これの倍電圧でG2電圧を用意できます。まずは出力管を差さずにドライバーの特性、というよりもこんな事をして大丈夫なのかを含め様子を確認してみます。回路図は下のようになりました。


  


出力管の無い時はB電圧も上がって約1350V位になりますからヒヤヒヤものですが、電源スイッチを入れても取りあえず異常はありませんでした。

まずはホッとしながら測定を開始すると、歪は多いもののなんとか大きな出力電圧が取れました。


  

出力電圧200Vrmsの時つまりP−Pで560Vの時、歪率は6,5%となりますが波形は意外と素直な状態です。


           


また定格外の300VrmsつまりP−P840Vでは、だいぶ波形がひずんでいます。


          


更に周波数特性を測ってみると実にひどい特性で4kHzあたりから低下が始まり、カットオフはなんと7kHzではありませんか。


  


これほどの高域における落ち込みは出力インピーダンスの高さだけでは説明がつきません。落ち込む気持ちもほどほどにGK71を差して歪特性を計測します。


   


10W以上では打消しがうまく重なり歪率が上がりません。30W以上はカットオフとクリップが始まります。

しかし周波数特性はドライバーの特性がそのまま表れていて、とても実用になりません。と言うことで、今後はこの悪すぎる周波数特性の原因を考察することになります。

まず6BQ5の出力インピーダンスを40kΩとしても、7kHzのカットオフ周波数を持たせるのには500pF以上の静電容量がぶら下がっている計算になりますが、これは真空管の電極構造から言って大き過ぎます。

そこで怪しいと睨んだのがカップリングコンデンサーのストレーキャパシティーです。実は以前製作した時、大型の4μF 1,6kVと言う取り付けタイプのオイルコンを使用していました。しかし6CA7(T)でドライブした際、周波数特性に異常が無かったのはなぜでしょうか。


          


試しに6CA7(T)の内部抵抗1,4kΩという数値を使って同一条件の計算をすると、カットオフは220kHzになり、オーディオ帯域では問題にならないことが分かりました。そこでこの大型コンデンサーを使わず0,22μFで1500Vのチューブラータイプに取り替えた結果が下の図になります。

ただしオレンジのラインはドライバー単独なのに対し、グリーンのラインはOPTを含めた総合特性です


   


こうしてカットオフは55kHzまで上昇し周波数問題は解決しました。大型のオイルコンをカップリングコンデンサーに使うときは、ケースを直接シャーシに取り付けず絶縁させ、高抵抗でアースすることが必要です。


        


その後改めてケース-電極間の容量を測ると560pFと出ました。あとは歪をもう少し少なくしたいところですが、ちょっと変な方法を思い付いてしまいました。


つづく









その3
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