300Bは有難い球です。だからこそ丁重に扱われてきました。そして現在庶民の手にも簡単に入る球へと変化しましたが、その扱いに変化は起きていません。

変わらない理由は、やはり300Bを聖域としたいロマンがある一方、この球の限界を試したいという欲が湧き出てくるのも、これまた凡人の性(さが)といえましょう。

そこでプレート損失やフィラメント電圧以外は、300Bの扱い方について何も知らなかったことにして、特性カーブから勝手にアンプを設計してみました。動作はB1級PPです。

するとプレート電圧800Vで75W以上のハイパワーアンプができるではないですか。これならスベトラーナのSV811−3に負けていません。


         


定格的にも動的プレート損失Pdd140Wには余裕で収まり、連続矩形波出力のPdsq70WでもOKなので、オーディオはもとよりPAなどのハードな仕様にも通用します。

動特性を調べてみると、やはり3極管はB1級動作に向いていて、カットオフ近傍まで優れた直線性が示されました。これがビーム管や5極管では、こうはいきません。

またバイアス電圧ー120V時にプレート内部抵抗が730Ωとなり、2球直列の2kΩとして信号源インピーダンスを考えても、、負荷10kΩに対し、5以上のDFが無帰還で期待できます。





試しにGEの規格表から、6550の100Wアンプによる動特性グラフを作りましたので、比較のため載せておきます。

AB級となっていますが、ほとんどB級で、縦軸のスケールは異なるものの、直線性の違いが判ると思います。

          




またウルトラリニア接続でも、「ウルトラ」というほど直線性の向上はなく、やや良くなったかなという程度のように見えます。

よって内部抵抗を下げるには5極管接続のゲインの高さを利用して、トータルでNFBをかければ、ドライバーの負担も少なく、合理的なのではないでしょうか。





アンプを製作する際、初段の基本回路は別途掲載予定の10JA5によるHVTC-SLVCCC-PPと同じもの使います。ただしドライブ電圧が高い分、出力段の高いプレート電圧を利用して、若干の定数変更を行います。


            


こうしてアンプ部分は下の図のような構成となりました。初めて見る方にとって初段の回路は少し変わっていますが、これは超低電圧定電流接続(SLVCCC)という方式を利用したものです。

特徴として、マイナス電源を使わず初段回路から差動増幅回路が、それも真空管だけで構成できる点があります。もちろん例によって世界初の回路であります。

ただし、こうしたことは私が先んじているからではなく、不思議なくらい誰もやってこなかったからです。


 


2013年はずっとダラダラしていましたが、2014年はこのアンプが作れるところまで行けるよう、テキパキとアンプ作りをやりたいと思います。

なお、初段の6N7低電流領域と、5725(6AS6)−SLVCCCの特性は下のようになっています。


           


          


特に5725はエージングが必ず必要で、ヒーターのみ点灯して一晩から二晩おくと、見違えるほどりっぱな特性に変化します。

この違いはなんとなく音が良くなった(ような気がする)といったレベルではなく、使えるか使えないかの分岐点でもあります。

こんな感じで2014年もよろしくお願いいたします。とはいったものの、その後2C39Aと4−400Aのシングルアンプ製作が入り、実際の開始は2016年の4月になってしまいました。






つづく




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その1 基本設計
その1 基本設計
その2 配線してみて
その3 計測
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