制作がなかなか進まなかった理由は、シャーシ加工がおっくうだからですが、それでも何とかここまで来ました。今回の出力トランスはエドコア社製CXPP-MX-5Kを使う予定なので、トランスに合わせてブルー系統で塗装しました。

エドコアのトランスは日本代理店が便利です。一方6個以上購入するのなら、メーカー直接の取引のほうが種類も多く、輸入に掛かる送料を払っても、安くなる場合があります。

また出力トランスのコア部分は黒色でしたが、見た目が重すぎるため、シルバーに塗り替えてあります。電源トランスはオークションで手に入れた100V対635Vx2というもので、やはりブルーとシルバーに塗装しました。


    
                    とりあえずソケットを付けトランスを置いてみた状態


手前左の大きな穴は、冷却用シロッコファンの空気取り入れ口で、上部中央右寄りのセラミックソケット周囲にある、6個の吹き出し口から、300Bを冷却します。


                            


またファン開口部分のシャーシ上には、定番のケミコンタワーが乗ります。電源トランスにヒーター用タップは無いため、300Bのフィラメントおよび6N7や6AS6も、同じ5Vのレギュレータで点火し、少しでも重量を軽減させます。

6,3V管を5Vで点火することに疑問を感じるかもしれませんが、特性上全く変化のないことは、多くの実験で解ってきています。


           


つまり巷に安価で大量に出ている5Vのスイッチングレギュレータは、そのまま6,3V管の直流点火に利用できる、便利グッズだったのです。

初段とバイアス用の電源トランスは、ラジオ少年の2次電圧160V、180Vタイプを使いました。ちょうど6,3Vタップも付いているので、これを倍電圧して冷却ファンと、6AS6のg2g3用バイアス電源とします。

と言う事で、なんとか配線も終わりに近づき電源のテストも済み、動作テストに入ったところ、またしても問題が起こりました。





なんと出力に、ヒーター用スイッチングレギュレータの高周波が入ってしまっていたのです。しかしもはやヒータートランスや別のレギュレーターが入りそうな場所はありません。

そこで、どうしようもない設計変更をすることにしました。全く気は進みませんが、それはヒータートランスの外付けユニット化です。

まずは手持ちの中から使えそうなトランスを探すと、6,3V・5Aが4回路ついたものが見つかりました。外付けなのでスペースの制約がなくなり、300B用に大型の0,1H・10Aという東栄トランスのヒーターチョークも取り付けることにしました。


  


研究がさっさと進まないのは、私の研究所に、ドイツから一時帰国したジャンベプレイヤーが居候しているからです。心優しい私は、奴のプライベートを守るべく、風呂に入るのも我慢しているのです。偉いでしょ。

それはともかく、アンプの後方に8ピンのGTソケットを取り付け、ここから外部トランスと結合することにしました。一応デザインも気にして、ブルー系に塗装してみました。


     


こうして再度計測して見たところ、なんと全く以前と変化がないではないですか。高周波波形はスイッチングレギュレーターから来たものではなかったのです。そこであれこれ調べるうちに、高圧B電源からの飛びつきノイズであると判明しました。

初段の差動回路である6N7のプレートは、非常に高インピーダンスとなっていて、スタンバイスイッチから引き回している高圧交流が、そこに飛び付いていたのです。

そこでスタンバイスイッチ周りをアルミプレートでシールドしたところ、ノイズレベルがグンと下がりました。さらに中央にもシールド板を配すると、これもかなり効果的でした。





仕上げとして配線が最短となるよう、プレート回路を全て配線しなおすと、ノイズ的にはかなり満足のできる状態になりました。

こうなると元のスイッチング電源に戻してもよいのですが、もはや疲れ果てた上に、これはこれで少し笑えていいかなと思い、外部トランス方式で進めることにします。

こうして何とか真空管アンプらしくなってきました。全体の外観は下のようになり、かなり無理をした設計であると感じます。





次はいよいよ特性の計測に入ります。





つづく




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その2 配線してみて
その1 基本設計
その2 配線してみて
その3 計測
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