SLVCCC研究
その2 実用性と汎用性について
       超低電圧定電流接続
super low voltage constant current connection
SLVCCCはどのような5極管でも出来るのでしょうか。まず言えることはg3が個別に出ていないとできません。

さらにいろいろな球によるSLVCCCを実験すべく7543という6AU6の同等管を数本計測してみると、どの球もまるで定電流とは程遠い特性で、しかもヒステリシスカーブのようにループを描いているではありませんか。


        


そこであわてて中古の6SK7などの球を計測してみた所、もっとひどいループ状の特性が次々と出てきました。

結局あの定電流特性に汎用性は無く、たまたま手持ちの球がそういう特性を持っていただけなのかという失望感が一瞬走りました。

しかしさらに10数本持っている松下製の6BA6やシルバニア製6AU6を調べてみると、どれも定電流特性をしっかり持っています。

そこで、これはメーカーによるエージングの違いではないかと予測し、同じ7543を8時間ほどエージングしてみました。具体的にはヒータのみ点灯させていただけですが、その結果が下の写真です。


          


エージングの効用についてはウエブ上で様々な意見が出ています。しかし意見はともかく、SLVCCCにおいては実用になるかならないかの大きな変化が計測されています。

さらに新古中古の6SK7やサビが出たようなメタルの6SJ7など、ループ状になっていた球にも同様なことがいえ、エージングで見事復活を果たすことが出来たのです。


              


ただし明らかに中古球の何本かはループ状のまま復活できず、もはや寿命が来ているようでした。つまりこのループがエージング不足とエミ減状態という、管球人生の誕生期と末期を知らせるサインだったのです。

しかし、さすがと言うか、JAN規格のメタル管6SJ7を計測してみると、外見にサビが出ていても、特性は皆しっかりしていました。

このように3極管差動回路による実験を行いましたが、アンプの初段としてはゲインが低すぎるため、5極管による回路を構成することにしました。

扱う球はシャーシの都合により6SJ7で、回路は下記のようになっています。個人的にこの回路構成が美しいと感じるのは、いきなり差動回路が働いているのに、マイナス電源や入力コンデンサが使われていない点です。

これはちょうど、土台をきれいに打った後、玄関サッシを入れようとしたら下が出っ張ってしまい、仕方なくせっかくの土台を一部壊して穴を掘り、なんとか高さをそろえた、といったダサい工事現場を嫌うからです。


    
                                    1KHzの出力波形


美的な話はさておき、この状態で28倍程度のゲインがあり、ノンクリップでは3Vrms入力時、75Vrmsピーク値で100Vを出力できます。

ただし出力インピーダンスはかなり高いので、周波数特性を悪化させないようにカソードフォロワなどのバッファが必要になる場合もあると思います。

下が10KHzの矩形波ですが、下段の上のように低容量測定ケーブルに変えると観測波形が変わるのが分かります。

            
          10KHzの矩形波  100KHzの6AU6プレート
                       (6SJ7のカソード)波形

その右の写真は6AU6の100KHzにおけるプレート波形、つまり6SJ7のカソード波形で、定電流特性自体は広帯域であることがわかります。

これらの点から、絶対カソードチョークフォロワが必要な811APPとのコラボはどうでしょうか。ということで、新しいアンプのプランが浮き上がってきました。

でもその前に確認したい事があります。それは6EJ7などのハイgm管でSLVCCCの差動回路を構成したらどうなるのかという点です。

つづく












その1 これは新たな発見なのか?
その2 実用性と汎用性について
その3 ハイgm管での動作例
その4 動作原理を考察してみる
その5 さらなる汎用性を確認する