独立型アンプでのグリッドチョークの改造と考察
エキサイターを使わない独立型アンプでは2段増幅構成となり、プレート供給電圧2000Vにおける6HV5の動作はプレート抵抗100kΩと設計されます。

よって4−400のグリッド抵抗は200kΩ以上、できれば500kΩ位が理想ですが、あまりここに高い直流抵抗を用いたくありません。そこで50〜100kΩまでは抵抗器を使い、残り150kΩ分は市販のチョークコイルを使用する事にしました。





とは言え実際に簡単に入手出来るものとして東栄変成器ののCH−15020Zでも150Hしかありませんから、20Hzにおいて150kΩつまり1200Hを得るには8個直列にする必要があります。これはあまりスマートではなく、またいくら1個1200円とはいえ8個ともなると結構コストがかかります。


     


その時ふと気付いたのがこのチョークコイルの定格直流電流です。A1級アンプのグリッドチョークは直流電流が流れないのでこんな物は不要なのです。つまりコアに用いている直流磁化防止用の磁気ギャップを撤去すれば、もっとインダクタンスが稼げるのではないでしょうか。

早速チョークコイルをバラしてみました。フレームをはずし、EIコアのIの部分をシンナーなどを使って分解します。写真では分かりにくいですが、磁気ギャップとして接合部分に薄い透明なフィルムが貼ってあります。








そこでこれを取り去り、表面をシンナーで拭いて接着剤などのデコボコをならし、最後にアロンアルファで圧力を掛けながら接着します。コードがつながっているのはオシレーターで低周波をかけながら圧力によるインダクタンスの上昇を見るためです。


     


このような改造を行った結果、直流は流せなくなりましたが、インダクタンスは倍の300Hまで上昇しました。これなら4個で1200Hと充分な値のためコストも半分になったにもかかわらず、改造費用はほとんどゼロです。

またグリッドチョークといえども、あまりコアの小さい物では両端にかかる400Vもの電圧で磁気飽和を起こしてしまいますので、4個直列程度が良いと思いますし、巻線間容量も直列に働くため4分の1に減少し、高域に有利でしょう。

早速6HV5の内部抵抗を50kΩとして、100Hzのレベルを基準に実際の周波数特性を計測してみたのが下の図になります。

さすがに1個(300H)だけでは−3dBつまりカットオフが38Hzとなってしまいますが、3個あれば12Hzまで延びていることが分かります。もちろん4個ならば9Hzと充分な値ですし、実働状態における6HV5のプレート内部抵抗は25kΩ程度なので、さらに低域は延びるでしょう。。


     


ネットで見る市販グリッドチョークとして、「サウンドパーツ」と言う所の1kHzにて2,2MΩと謳っている8400円の製品は、長い説明文の割りにインダクタンスの表示がありません。


              


さらにその場合の計算値では350Hしか無いのに、なぜか30Hzで250KΩもある(1330H必要)となっていて良く分かりませんし、写真で見たサイズから推測するに、大きな電圧はかけられないでしょう。

また「ノグチトランス」で出している600Hというファインメットコアのものは性能がはっきりしている半面、1個32000円もするので、これを2個も用いたのでは最早何をやっているのかわからなくなります。その点今回の1200Hで4800円は異常にお安いといえましょう。

一方「ラジオ少年」と言うショップではシールド付き700H10mAが2800円で出ていて、コンパクトさと定格にそそられますが、磁気飽和と巻線容量及び送料を含めたインダクタンスあたりの総合価格で、現行方針に若干の分があります。しかしながらこの製品は改造によって1000H以上が得られそうなので、今後実験の対照とします。


            
            2014,10,22現在は扱っていないようだ


「オーディオ専科」の300Hのものは今回の物より一回り小型で、しかも3990円もするのでちょっと折り合いがつきません。


  


つづく





その2
1 最適動作点と動作方法を探る
2 独立型アンプとグリッドチョークの改造
3 電源回路とパーツレイアウト
4  ドライバーのカイゼンと部品配置
5、実作に向けて爆発の時代
6、実作に向けて計測の時代
7、特性向上に向けて
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