実作に向けて計測の時代
とうとうリップルバッファー抵抗群は、33Ω・3Wの4パラ4シリーズ構成となり、そのスペース確保の為、どうしようもない空中配線が出現しました。

はっきり言って最早これは配線と言えません。リード線とハンダと抵抗器でできた3流オブジェ以下です。しかしここしかスペースが見当たらないのです。


           


さらに全てのブリーダー抵抗も240kΩ・3Wの2個パラに変更して、ついに爆発しない2400V電源が完成しました。早速ドライバーの計測から始めます。

今考えるに、通常の両波倍電圧整流ならリップルの谷間が浅く抑えられ、抵抗爆発は起きなかったかもしれません。まさに半波整流を半端な精神で扱ったバチでしょう。

とは言え両波では電源トランスの2次コイル電位がDC+1200V、プラスマイナスAC300V、つまりピークで最高1620Vとなるため、耐圧を考え半波整流とせざるをえなかったのです。

ドライバーに必要な出力電圧はピーク400Vでrmsなら290Vです。実際に歪率を計測してみると、300V rmsで1,6%、400V rmsでも2,2%と充分余裕があります。



        


下の写真が400V rms時の波形で、ピーク値はプラスマイナスそれぞれ560Vまできれいにスイングできるとわかりました。この手の高電圧ドライブにおいて、6HV5は実にイイ仕事をしてくれます。


           


とここまではなんとかうまく行っているようですが、問題は次のステップつまり4−400Aのプレートとg2に前代未聞の2000Vをかける作業があります。

また無信号時に問題無しでも、最大出力付近でg2が4000V近くになる時、g1はマイナス800Vとなり、その間に4800Vの電位差が発生することになるのです。

これはオーディオではもちろんですが、送信機でも前例のない世界初の実験を意味します。果してこのような状態に4−400Aが耐えられるのか、心配の種は尽きません。

とは言えこのように何時までもビビッてグダグダ時間をつぶしていたのではラチは明きませんので、思い切って高圧をかけます。こわいな〜。





・・・プレートの左側が赤化していますが特に問題は無いようで、とりあえずほっとしました。ついに4−400Aにおいてg2電圧2000VのHVTCは通用すると証明されたのです。

バイアスを調整してみると、やはりプレート電圧が少々足りません。しかしもはやプレート電圧を上げる手立てやスペースは無く・・・いや、ありました。

つまりAC100Vを上昇させてしまえば良いのです。そこでこのアンプはもともとAC110Vを前提に作ったのだという事にして、スライダックにより110Vで動作させた時の特性が下のグラフです。


     


今回使用したのは中国製4−400Aですが測定範囲外のカットオフ特性が予想特性よりも悪く、その反面6HV5Aドライバーの特性がとても良かったので、このような特性になりました。

つまりドライバーを2000Vで動作させたため条件が理想状態に近づき、いつもながらのセコい2次歪打消しが通用しなかったというわけです。

残念ながらAC110Vでもまだプレート電圧が不足しているため予定出力80Wには及ばず、70Wで5%、50Wで4%、30Wで3%となりました。クリップは75W以上で起こります。

電圧不足は6個直列のプレートチョークが持つ直流抵抗1,6kΩの影響もあり、ここで160V程度電圧を消費しています。


      


周波数特性は低域で17Hz、高域で16kHzがカットオフ周波数となりました。高域は20kΩというハイインピーダンスと、出力コンデンサーのストレーキャパシティー(約600PF)の影響でしょう。今後ケースを高抵抗でフロートさせてみます。


                  


とりあえず2015年1月7日、2000VのHYTCが通用するとわかりましたので、他の4−400Aも含め今後このアンプの細部を詰めてゆきます。また2000Vくらいが単独型オーディオアンプの実用的限界のようにも感じます。


            
              電柱などを始めアクリル製品が多い


ちなみにフィラメント電圧は4,5Vで、半波整流により電源ハムが心配だった残留ノイズは1,5mVと、良くはないが、そんなに悪くも無い値になりました。リップルバッファが体を張って、この値を稼いでいるのだと思います。

またかなり多くのトランス類を搭載するため、シャーシの強度が不足しているのに、内部満タン状態により補強を行えません。穴あけがメンドウですが、せめて天板に1,5ミリのアルミ板を追加し、2重にすべきでした。

さらにバイアス調整時、プレートチョークは全体が2kVで帯電していることを忘れ、バイアス調整時、出力トランスとプレートチョーク間に手が接触してしまい、又もや手の皮膚に穴が開きました。

これってかなり痛いんですよね。オレって学習能力無いなあ。
そこで出力チョークには、パンチングアルミで囲いを作ります。必ず。



つづく





その6
1 最適動作点と動作方法を探る
2 独立型アンプとグリッドチョークの改造
3 電源回路とパーツレイアウト
4  ドライバーのカイゼンと部品配置
5、実作に向けて爆発の時代
6、実作に向けて計測の時代
7、特性向上に向けて
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